タクシー「接待」騒動の筋違い |
|
2008/6/10 (火) 02:45:40 - - No.1213031841
気が付けば巷では霞ヶ関周辺でのいわゆる「居酒屋タクシー」を「接待」だとして
問題視しているという。ウチの会社の女性が先週教えてくれたが、今日になって
携帯サイトのニュースでも話題になっていた。
なんでも、厚労省では職員19人が97年度から約340回、運転手からビールやつまみを
振舞われていたとか。また防衛省では、内局の18人が1人当たり1〜7回、延べ50回
「接待」を受けた、という。
この「問題」についての自分のスタンスは至極明快だ。
「アホかメディアは!? 官僚イジメの形を借りた法人タクシーへの利益誘導に
まんまと乗りおって」と。
実は自分も、「居酒屋タクシー」を3年くらい前から利用しているクチだ。
厚労省発表の伝でいけば、過去3年間で150回以上は1人で「接待」を受けていた、
ということになる。もちろん誰からも責められませんけどー。
もともとは深夜や明け方に会社から自宅へ帰る際、ハラは減ったし時間があるしで
コンビニでビールとつまみを買ってタクシーに乗っていたのだけれど、
どうせ長距離を乗るなら高級車を使っている個人タクシーのほうがいいし、
自然に「個タク」を選ぶようになっていた。すると、ある夜のこと、
「ビールならありますから買わなくてもいいですよ〜」と。
しかも「おつまみもありますよ〜」さらにダメ押しはお会計時に
「QUOカード差し上げます、次回も良かったら是非」と。
ここで重要なポイントは、客の要求ではなく、1介の個人事業者である
「個人タクシーの運転手さん」の自発的な善意として、一連の「接待」がある、
という点である。報道では「接待」と言っているが、これは明らかに事業主としての
顧客への利益還元による「営業努力」なのだ。
かつての「ノーパンしゃぶしゃぶ」とかいった「接待」とは、本質が全く異なる。
あれは接待されている人間と最終顧客(国民)が全く別だからイケなかった。
タクシーの場合は乗客=接待される人、である。
走行距離が一緒なら個人タクシーも法人タクシーも料金はいまは一緒である。
ならばサービスが良いほうに乗るのが自由競争の摂理だろう。
そのルールに従って気に入った運転手と馴染みになることがなぜイケないのか?
そんな話は絶対あり得ない。日本はいつから共産主義国家になったのか?
そもそも「居酒屋タクシー」を「接待」というのは、いかにも器が小さい話だ。
ビール1本なんてたかが200円とか300円の話でしょ?・・・ということをどこまで
テレビを見ているお茶の間の庶民は理解しているのか?
話があまりに小さすぎて「日本もここまで堕ちたか」と泣けてきそうだ。
しかも、この「接待」はしっかりしたコスト管理に裏打ちされている商行為なのだ。
一般に5000円未満の客にはこのような「接待」はない。料金的には日本橋〜渋谷
ないし新宿、といった距離感だが、この程度の距離なら、高速に乗ってしまえば
深夜なら10分で着いてしまうので、飲んでくつろぐヒマがそもそもないし、
利益の絶対額も接待するに値しないからだ。
通常は高速に乗って20分以上走る1万円以上の客に対してのみ、「接待」は行われる、
と運転手さんから聞いたことがある。もちろん絶対条件ではないけれども。
ちなみに日本橋から調布まで首都高経由で帰ると、深夜ならわずか20分程度しか
かからない。これが電車なら、特に深夜は各駅停車なので90〜120分コースだ。
このくらい圧倒的に速ければ、タクシーの価値もあろうというものだ。
しかもドリンク付き、といえば、まさに飛行機のビジネスクラスみたいなものだし。
1万円も乗れば、そこにビール代と
原価150円程度のつまみ代、さらに万一QUOカード500円を付けたとしても
1000円を超えることはあり得ない。せいぜい700〜800円だ。
銀座から小田原あたりまで2〜3万円かけて帰る客に当たれば、サービスコストは
売り上げの5%未満に収まる。これなら全然問題ない。
それでリピーターが確保できて1日に余計に2人程度客を乗せることができたら、
十分にお釣りが来るのである。実際、自分の馴染みの居酒屋タクシー屋さんは
人柄の良さも相まって連日引っ張りだこだ。自分が呼んでもなかなか捕まらない。
「乗せていただけてラッキー」てな按配なのである。
一方で、一歩外に足を踏み出せば、深夜の路上には客待ちの個人タクシーが
ゴロゴロ転がっている。1時間も2時間もひたすら客を待ち続けているのだ。
多少の利益を客に戻して回転を稼いでいるクルマと、500円の利益をケチって
何万円もの水揚げを毎日見逃しているクルマ。
「事業」として見た場合、どっちの「経営者」が賢いかは明白だろう。
そもそも、このような顧客への利益還元がいけない、というなら、
マクドナルドのクーポンも、航空券のマイレージも、クレジットカードのポイントも
全部「接待」として十把一絡げに取り扱うべきである。そうでなければ
個人タクシーを標的とした営業妨害以外の何者でもないではないか。
タクシーというのは極めてパーソナルな乗り物だ。
特に個人タクシーは、1人事業者なのだから、ハイヤーに極めて近い属性がある。
実際、自分の馴染みにもハイヤー運転手上がりの人がいる。
長距離を乗るし、車内で重要な電話をかけることもあるので、運転手は口が固くないと
いけない、という点では飲み屋のママと通じるところがある。
馴染みになれば、いちいち行き先を説明しなくても玄関まで送ってくれるので
道中、安心して眠ることもできる。
「馴染み」を作ったほうが良いことが必ずある性質のサービスなのだ。
法人タクシーは車両が危なっかしいし、ちょっと前までは深夜割増が割高だったし、
運転手が信用ならないので、一般に、深夜の長距離に使って良い点はまるでない。
だから、例え霞ヶ関の官僚であっても、ある程度「タクシー常連」であれば当然に
馴染みの個人運転手を使おうとするのが道理だろう。
それを「接待」という世間が忌み嫌うキーワードを使って呪縛してしまうのは
本当に意味のあることなのだろうか?
今日も自分は「居酒屋タクシー」で自宅まで送ってもらったが、
運転手さんに聞くと、霞ヶ関界隈で仕事をしている運転手仲間は、
全然仕事がなくなってしまったそうな。完全に「個タク」に対する営業妨害である。
(法人タクシーは個人的な営業努力をする意味がないのでそもそも対象にならない)
ただし、である。
どんな商売でもそうだが、客から利益提供をせびるのはよろしくない。
そういう客がいることは事実だが、美しくないし気分が悪くなる。
問題が起きる時は大抵、客が強要して、それが叶わないときに逆ギレするケースだ。
「営業努力」それ自身が自然に問題になることなんて、まずあり得ない。
とすると、問題があったのはタクシーではなくて個別の官僚自身の人間性だろう。
もしかしたら、今回の問題の発端は、官僚が自分の立場を忘れて
偉そうに、だけどセコい要求を運転手さんに浴びせたのかも知れない。
そうだとしたら、人間としてエラく小さいな〜、と思う。
そういう役人には日本を背負って立つ器量なんてないから、とっとと辞めて欲しい。
「居酒屋タクシー」自体に何ら問題はないし、サービスの充実で客を取る、という
意味では極めてマトモな話なのだから、これを問題にするのはナンセンス極まりない。
これが認められないなら、日本にマトモな「営業努力」が評価される素地はない、
ってことだろう。実にバカバカしい話でしばらくは開いた口がふさがりそうにない。
|
|
|