日本のバイオベンチャー研究のお粗末さを憂う |
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2004/9/22 (水) 03:00:55 - - No.1094887716
(04/9/11に投稿したオリジナルを一部訂正しました(AmgenIPO時の「発行済み株数」→「公募
株数」))
仕事中、こんなサイトを見つけました。
http://www.chikawatanabe.com/
東大(理IIIかな?)を出て三菱商事〜マッキンゼー〜ネオテニーを経て
コンサルタントとして独立したヤリ手ネェちゃんのブログサイトです。
なかなか面白いですよ。年齢的にも近いし、シリコンバレーの日本人起業家としては
「気鋭の若手」って感じのはずなので、「おっ!やってるな」と親近感沸きますね。
日経とかがコラム書いてくれっていうのも分かるような気がします。
ひと昔前ならデータクエストの松原純子さんとかの役回りだったんですけどね。
彼女もネットバブルの折にデータクエストを辞めて起業したのをTVで見ましたが・・・。
該当サイトはなくなってるみたいです。女性向け情報ポータルみたいなのでしたが、
当時から「なかなか大変な分野を選んじゃったね」と感じていたので残念。
* * *
これまでRCT内ではあえて触れていなかったので、面識のある方でも
あまりご存知ではないと思うのですが、私の本職は証券業です。
ただ、ひと口に「証券」といっても間口が広くて、
今やっているのはベンチャー投資の仕事です。
専門領域は企業分析ですが、しょせんは「モノ書き」ですし、ベンチャー絡みの仕事で
「私の担当業務は〜」なんて話は通用しません。投資先の仕事の代理から投資家への説明、
社内管理(自分のとこだけじゃなくて投資先までも)果ては情報システム管理や
訴訟も含めた法的対応までぜーんぶ自分に回ってきてしまいます。
社長が面倒な仕事できないので(苦笑)。
試しにググってみてください。恥ずかしながら私の過去の仕事が公的機関によって
晒し者になっとります。たぶん死んでも残るんだろうな(笑)
<Googleで「伊藤成治」と打ってみた>
http://www.google.co.jp/search?hl=ja&ie=UTF-8&q=%E4%BC%8A%E8%97%A4%E6%88%90%E6%
B2%BB&lr=
こういうのは自分では消せないですね(笑)。ほとんど十字架ですな
http://www.nira.go.jp/icj/tt-sric/idx1/1996/728.html
これは大変残念なことなのかも知れないのですが、いまもってネット上では
有名な「伊藤成治」さんというのは3人しかいません。
大学教授の「いとう・なりはる」さんと消防士の「いとう・せいじ」さん
それからRC界で物議を醸している?「金融界最強(だろうな多分)のRCレーサー」の
「いとう・せいじ」さん。
ググって出てくる、「株式会社ソフトキャピタル」というのも現在私が参画している会社です。
なんでワタクシだけ異なる3つのキャラでGoogleの上位に出てくるの?(爆)
(日本中の「伊藤成治」さんにもっと頑張って欲しいぞ)
このへんのランキングは、ここ数年、折に触れてたまにチェックしてるんですが
まったく変わらないですね。
まぁそんなことはどうでもいいんですが、ともあれ、そういう仕事に携わっているので
今回、アメリカのバイオベンチャー企業への投資についてレポートを書くことになり、
シコシコと調べるなかで、ひとつ、どうしても取れない数字があったんです。
世界最大のバイオ企業、Amgen(アムジェン)社の上場時公募(IPO)価格です。
アムジェンの株価は昨日終値で57.30ドル、上場以来これまでに1株を48株に分割して
いますが、んじゃ〜一体、上場時に株を持った人はいくら儲かってんのよ?という計算を
するには、取得価格が分からなければ話になりません。
実は、過去5〜6年くらいに上場した会社ならこういったデータベースも整ってきているのですが
それ以前はすべて「紙」で記録されていたので、
ネット上に10年以上前の上場企業の公募株価をまとめたデータベースというのはないんです。
山一の研究所時代なら、社内の図書館へ行って、書籍をあさるとか、上場した1983年6月前後の
ウォール・ストリート・ジャーナルを引っ張り出して株価覧をめくって調べる、
なんて力技ができたんですが(そんなことが可能なのは今では野村しか残ってませんが)。
こういう数字って、当然、日本でもベンチャー投資を論じてるような著作や学生さんあたりの
自主発表がwebにもひとつくらい載ってるだろう、と気楽に考えていたのです。
ところが、ない。全然ない。5年前とかなら分かりますが、
商用インターネットが始まってからもう10年が経っているのに、誰も書いてない。
こういうところがいかにも日本らしいところで、結局、「日本のバイオ産業育成をー」とか
言って政策立案とかに関わっているシンクタンクや研究者方は、そもそも人数が少ないうえに
結局のところ産業としての面しか見てなくて、金融からの視点が欠けてるってこと
なんですよね。投資家が儲かっている実例を具体的に見せないでバイオ株投資もないもんだ。
それにしても大学の研究室や日経BizTechなどのネット報道含めて
誰もウェブに発表らしきものがないってのはどういうことなんだ?
それだけ日本はバイオビジネスの層が薄いってことなんだろうけれど・・・。
日本という国(除く大阪?)は子供のときから金融に関する教育に不熱心で、結果として
起業しようにも金融の素養に欠けていて大失敗するケースが後を経たないのが実情です。
バイオに限らず、もっと株価の切り口からベンチャーを眺めた発表が
ウェブ上に出てきて欲しい。頑張れ日本の学生諸君!
・・・というわけで、いくら探しても出てこないので
昨晩は会社に泊まりになってしまいました。
(実は土曜の今もまだ会社にいてこんなムダ作業をしている<苦笑>)
いや実は、アムジェンに聞けばすぐ分かるんだろーなとは思ってたんですが、
ここまで見つからないとは思わなかったし、こんなツマらない質問をわざわざ
聞くのもプロっぽくないぞー、探さなきゃ・・・とつまらない意地を張っていたのでした。
そもそも今から質問しても返答が帰ってくるのは最短で火曜日の朝(日本の月曜ひるはアメリカ
の日曜夜)。
資料を使いたいのは水曜日なのでとうてい間に合いません。
ホトホト困り果てたあげく、会社への問い合わせメールを打ちかけたところで
「ん、待てよ、アメリカでは日本の何倍もケーススタディされてるハズだろ〜?」
と思い直して「すべての言語」でググり直してみたところ、あったあった!
しかもAmgenのサイトに。激ショック!
なんだよー、さんざんAmgenのサイト内も見たのによう〜。
「Investors」ではなくて「About US」のところにHistorical Factsとして
記載されていました。それじゃぁ分からないや。やっぱり赤っ恥かく寸前でした。
RCTで言うところの「過去ログ読んでください」状態ですものね(苦笑)。
というわけで調べるのが一番大変そうだった数字も何とか見つかり、一件落着。
これで後は数字をまとめてグラフ書いてコメント付けてガーッと・・・。
え、「モーター研究室」と同じじゃんか、って? そうなんです。
あっちは自己満足、こっちは仕事ですけどね。
ところで、Amgen社の1983年6月17日に決定された公募価格ですが、
「18.00ドル」でした。さすがに公募オファーの上下限価格までは分からなかったですが
これは問い合わせても許される範囲でしょうねさすがに(笑)。
先ほども書いたとおり、これまでに48分割されています(注1)から、
もともとの1株の1/48の株が現在57.30ドルしているわけです。
つまり、1983年に1株を18ドルで買っていれば、
現在は57.30×48=2750.4ドルになっていると。152.8倍の値上がりなんですが、
期間が満21年かかっていますから、年率換算した株価上昇率としては
2750.40/18.00の21乗根を取って1.27058...つまり毎年平均すると27.1%の値上がりを
21年間続けた、というわけです。計算上は、ですけど。
実際には上場後6年間は鳴かず飛ばずで資金繰りも大変だったらしいんですけどね。
日本語のサイトで誰もこういったことを書き記している形跡がなかったので
あえてこまごまと書いておきます。
後でベンチャー投資を研究する人の参考になるといいかな、ってことで。
(注1)
AmgenのIPO時の公募株数は2,350,000株(発行済み株数は不明)
株式分割は1990年7月31日に2for1、1991年8月30日に3for1、1995年8月1日に2for1、1999年2
月12日に2for1、1999年11月5日に2for1、でした。
(いずれも日付は権利落ち日)
詳しくはhttp://www.amgen.com/corporate/AboutAmgen/facts.html でどうぞ。
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