posted on Jan 6, 2003
last updated on Aug 7, 2007
タミヤRC製品・即買いカタログ
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「モーター研究室」番外編

AYK GZ-1200Rモーター


今は亡き栄光の「AYK」=青柳金属工業(有)が1979年(だったと思う)にリリースした
革命的な電動RCカー専用モディファイドモーター「GZ-1200」をリファインし、
「究極のレーシングモーター」を目指したのが、このGZ-1200Rです。
従来、マブチやイガラシといった540サイズのプレス缶をベースに製作されていた
モディファイドモーターに決別し、RCレースだけを考えてゼロから作り上げられた
モーターだけに、さまざまなアイデアが盛り込まれ、その輝きは四半世紀を経た今日でも
ひときわ際立っています。

分解式エンドベル、交換式ブラシ、各種optローター、モーター缶の板厚増強、
レーズ仕上げ&斜めに積層されたコア、板バネワッシャーによるアンチバイブレーション処理
といった、今日のモディファイドモーターにつながる基本要素は、ほとんどすべて
GZ-1200シリーズによって全国のユーザーに認知された、と言っても過言ではないでしょう。
それほど、当時は大変なインパクトとともに全国津々浦々に普及したモーターだったのです。

ここでご紹介する個体も、当時、中学生レーサーだったふぇら〜り伊藤の愛機そのもの。
人口1万人に満たない、宅配便の営業所もないような田舎町に住んでいた少年でも
通販で簡単に本体もスペアパーツも入手できた、といえば
その入手のしやすさと普及度がどれほど凄かったか、なんとなくお分かりいただけるでしょう。
当時を懐かしむアナタも、歴史を知らないアナタも、
古くて新しい、そんなGZ-1200Rの「凄み」を、共に感じていただけたら嬉しいです。


<パッケージ裏面>












optローターの巻き線径は、ダブル巻きで0.6〜0.65mm、シングル巻きで0.8〜0.9mm (誤植で0.5になってます)の計5種類。この個体に入れていたローターはoptの0.9mmシングル巻きらしく、 ターン数はローターに「11」(!)とのメーカーによるメモ書きが残されていました。
今日一般的なモーターの線径とターン数の関係から推測すると、
 0.80mmシングルは20〜23ターン程度、
 0.85mmシングルは15ターン前後、
(0.90mmシングルは11ターンと判明済み)
 0.60mmダブルだと18ターン前後、
 0.65mmダブルだと15ターン前後
と、現代でも十分通用する、相当に刺激的なスペックだったことが分かります。
これは当時、バッテリーの主流が5セル6.0Vだったため。
7.2Vに比べて2割近くパワーダウンしてしまう(車重も80gくらい軽くなるんですが)ので、 それを補うためにこんなターン数の少ないモーターを使っているのです。 そういえば現代の4セル1/12オンロードレーサーも9ターン前後を使っていますよね。
当時のバッテリーは基本的にサンヨー1200SC(スタンダードセル)のみ。 近年は容量が増え、2007年にはニッケル水素で4500〜4600まで到達しましたが、 これに比べると当時の容量は圧倒的に貧弱です。しかし、当時のレースは「線香花火」のような超スプリントで、1パックの走行時間なんてたったの3分。JMRCA全日本の予選時間がわずか45秒<爆>だったからこそ許されただけで、ホビーとしてはかなり行き過ぎた状況でした。その反省からアメリカで生まれたのが880g規定による8分レースだったわけですが、これがJMRCAに導入されるのはまだずっと後のことです。
<モーター全景>

初代「GZ1200」とはエンドベルとカンの「白黒」が逆転しているのが外観上の最大の特徴です。 エンドベル形状は初代と共通のはずなんですが、配色と色味の違いだけでグッとアカ抜け、 初代GZ1200がミョ〜にヤボったく見えます。モーター缶にかけられたクロームメッキのまばゆい輝きとブラックアルマイトの硬質感が効いているのでしょう。初代のシルバーはアルミの地肌色、黒は塗装色でしたから。ステッカーのデザインがセンスアップしたのもポイントです。


<モーター外装の構成>

スチールのシームレスパイプを切り出してカンとし、前後エンドベルを高精度のアルミ削り出しで切り出す、という贅沢な3ピース構造を取っています。当時はプレス技術がまだ十分でなかったたため、マグネット部分を覆うモーターカン部分の磁束漏洩を防ぐために板厚を厚くしようとすると、どうしてもこのような構造にせざるを得ませんでした。もっとも、金属パーツの削り出し加工を得意とするAYKのことですから、ヘタに高価な金型作ってモーターカンの絞り加工するよりも、削り出しでエンドベル作ってしまったほうがトータルの生産コストを抑えられる、という計算もあってのことだったろうとは思いますが。



<エンドベル(前)>

もちろんエンドベルには前後ともボールベアリング装備です。ほぼ同価格、しかももっと後に発売されたタミヤ「ブラックモーター」が前側だけの片持ちベアリング支持(ブラシ側はプレーンメタル)、ブラシ交換不可だったことからすると、「格の違い」を感じずにはおれないクオリティです。

エンドベル内側から見ると、装着されているのはフランジ付きベアリングで、現在の主流のものとは若干違いますが、サイズ的には同じなので互換性はありそうです。ベアリング内部(ボールを支持するリテーナー)にガタが結構あり、さすがに時代を感じさせます。

<エンドベル(後)>

ノイズキラーももちろん当時のメーカー標準品です。 マブチ等でおなじみのセラミックタイプではなく、フィルム式のような形状をしています







<ブラシフードナット>

ブラシホルダーは完全な分解式です。つまり整備しやすいけど組み方が悪いとブラシが斜めになっちゃう、ってことなんですが、下の写真にあるとおり、ブラシが今と違って「正方形」なので斜めでも大した問題は起こりません。むしろレイダウンブラシ的な効用が得られて具合が良かったかも知れません。

ブラシとの接点を兼ねるスクリューキャップ(フードナット)部分には、栄光の「AYK」の刻印が。こういうところに、マニア心をくすぐられましたよね。「所有する悦び」という、今日のモーターではあまりなくなってしまった貴重な「価値」をも併せ持っていた逸品でした。

ブラシフードナットを外すと、このようにブラシ後端が飛び出してきます。

ブラシとエンドベルは機械的な接触だけで通電しています。

ブラシホルダー&フードナットはエンドベルとの接触面を絶縁されているのでエンドベルがアルミ製でもショートはしませんよ。




<ブラシ全景>

GZ-1200Rのブラシは押え用のバネを内蔵した独特の構造をしています。
基本的に1種類のみでopt設定はありませんでした。長年、AYK独自の規格なのかと思っていたのですが、どうやら 4×4mmブラシということで汎用パーツとして現在も入手可能のようですね。ブラシモーター式の電動飛行機用としてポピュラーな380サイズのブラシ交換式モーターによく使われているようです。AYK純正ブラシには、リッツ線(ピッグテール)などに今でも十分に通用しそうな良い素材が使われています。
この4×4mmブラシ、近年のOrionのV2テクノロジーやチェックポイントのモーターなどで類似のブラシスプリング/ブラシホルダー形式が復活しています。まぁもともとGZ-1200が「元祖」というわけではなくて、それ以前から米国のモディファイドモーターで先例があったようですけど。


ブラシを外すとエンドベルが分解できます。

エンドベルのボルトを緩めると、このように分解できます。







<モーター組み立て用ボルト>












<エンドベル(後)の裏側>

ブラシホルダー本体は真鍮製の削り出しです。

これ自体、外側に切られたネジでボルト留めされているので、分解整備が可能です。
なんとも原始的な作りでしょう?







<モーターカンとローター>

ローターをよく見ると、マジックで「11」と書いてあり、ロウ付け部をみるとシングル巻きであることは分かります。巻かれた線のボリュームからみて、恐らく0.90mm径を巻いているものと推察されます。

オリジナルのマブチ540Sと比べると、マグネットの厚みが2〜3割増えており、その分、磁力がアップしていることは間違いありません。

マグネットとローターのエアギャップは、現代のレベルからすると、若干広めかも知れません。

<アンチバイブレーション処理>

Team TECTROが2001年に特許申請した、高速回転するローターの前後方向へのブレを抑える「アンチバイブレーションシステム」の原型がここにあります。TECTROの技術はOリングですが、AYKでは板バネワッシャーを使って既に25年前に同様の問題を解決していました。

最近は、Orionがモディファイドモーター用に板バネワッシャーの仕組みを復活させているようです。サイトを見ると、特許を取ったの取らないのと言ってるようですが、少なくとも日本ではGZ-1200Rの現物を見せて「25年前に広く普及していた既存技術」と無効請求したら吹っ飛びそうな話のような・・・。逆に言うと、今さら誰も板バネワッシャーでは特許取れないので、自由にマネすればいいじゃないの、ということなんですが・・・。
<レーズ仕上げのローター>

いまやモディファイドモーターでは当たり前、HPI/Orionの23Tストックでも採用された、 ローターコア組み上げ後に外周を削り出して真円加工する「レーズ仕上げ」を国産のRC用モーターとして初めて採用。25年を経たいまでも全然錆びずにまばゆい輝きを維持しています。素晴らすぃ〜!



<ロウ付けされたローター>

ウレタン被膜で保護されている巻き線は高温ハンダで美しくコミュテータへロウ付け処理されています。

<ローター全景>

コミュレーズにかけていないので焼けただれたままのコミュテータが、25年前の激しいレースシーンをかすかに伝えています。





注目して欲しいのはローターの外観。スロットがスキュード(斜め)になっているでしょう? 産業用モーターでは当たり前の形状ですが、RC用としては今日では廃れてしまいました。スキュードコアにすると、タイミングの切り替えがスムーズになり、滑らかな回転が期待できますが、効率の面ではやや不利になっていたのかも知れません。ブラシ形状やコミュサイズとの兼ね合いもあるので計測してみないことには軽率な判断は禁物ですが、どうして廃れてしまったのかは自分としてはよく分かりません。

なお、このローター形状はファンとしても機能し、ある程度のクーリング性能が期待されていました。ただ、効果のほどはよく分かりません。吹けの良さと合わせ、効率よりも絶対性能を少しでもアップしたい昨今の23ターンストックには今でも使えそうな技術だと思うのですが・・・。
(以上は2007年8月までに更新された最新の情報です)
<2003/8/23追加>

以下、当ページの初回アップ後に見つけた写真を追加します。コレはGZ-1200(Rではなく元祖GZ-1200)のバラ売りエンドベル部品のパッケージのイラストなんですが、オリジナルのGZ-1200ではまんまファンを装着していたことを発見。「R」ではファンが廃されて代わりにスキュードローターになったと。なんだか20年経ってもやってることは変わらんな〜、と感じ入った次第です。

<2007/1/16追加> ずっと書きそびれてましたが、実は2004年頃に元祖「GZ1200」の程度の良い個体の入手に成功しました。 なので、折をみて紹介ページをアップしたいと思っています。どうぞお楽しみに・・・。
<2003/8/23追加>

そうそう、コレも最近発見したのですが、1980年代にはAYKの影響でスキュードローターが流行ったみたいですね。コレは京商から出ていたルマンモーターのローター。ローター外周のレーズ仕上げもお約束。なんとも贅沢な時代ですね。
<おまけ:ハイスピード1200>

ついでなので、GZ-1200Rのメンテ用にということでほぼ同時に発売された、メーカー純正クリーナースプレーの元祖、「ハイスピード1200」も紹介しておきます。

要するに基板洗浄用の溶剤スプレーです。当時の状況から考えると、主成分は後に製造販売が禁止された特定フロンのひとつ、テトラクロロエチレンと推察されます(たぶん)。今でこそRC専用のクリーナースプレーが溢れかえっているご時世ですが、当時は基板洗浄用の高価なスプレーを、それこそ無線機の専門店などに求めなければ入手が難しい時代。秋葉原や日本橋などが近い東京・大阪のユーザーならともかく、大多数の田舎のRCフリークにとっては「どこで売ってるのよそんなもん?」というシロモノでした。それを今から30年近く前、イッキに全国的な「RCレースマニアのお約束アイテム」に昇格させたわけですから「AYKエラい!」と叫ばずにはおれません。

当時は電圧が低かったせいもあって、CRCに代表されるオイルスプレーをコミュドロップの機能も兼ねてコミュに吹き付けることも多かったのですが、このスプレーの登場で「コミュに潤滑剤なんてもってのほか」という新しいカルチャーも定着しました。まさにモーター整備の考え方が180度変わってしまった、しかも方向として正しいほうへ導かれた、という意味でこのスプレーの果たした歴史的役割もまた、非常に大きかったと思います。

(おわり)




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