RCTタイヤ研究室
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追加情報 [2004/12/01 (Wed) 20:18:00]
[投稿者: ふぇら〜り伊藤]

RCワールド誌2000年12月号p.98に自作グリップ剤の記事が掲載されています。
ここでは、例として、CRC5-56を6割、2ストバイクエンジン用のエンジンオイル2割、
テレピン油2割、という配合の「自作グリップ剤」を紹介しています。

そういえば先のレスで「テレビン油」をすっかり忘れていました。
あのパラゴン黒缶の刺すように強烈なニオイはまさしくテレピン油のソレですよね。
油絵なんかと同じニオイ。

そういえば、パラゴン黒缶(正式名称は「Paragon GroundEffents」で発売は1989年らしい)には、
「注意事項」として「Contains Wintergreen Oil」という表記があります。
見た当初は意味が分からなかったんですが、辞書を引くと、「テレピン油」を指すそうです。
テレピン油は鉱物油(石油から精製したもの)ではなく植物油で、刺激臭が特徴です。
現在は松や樺といった針葉樹から採取するのが主流のようですが、古くは
柑橘類など様々な植物から採取されていました。
ここで大事な点は、テレピン油に刺激臭があるのは、サリチル酸を大量に含んでいるためである、
という点です。このため、昔はテレピン油を鎮痛剤としても利用していたそうです。
また、画材としては、サリチル酸の持つ強い浸透性が、絵の具を溶く油の助剤として
利用されているわけですね。

ちなみに、家庭用医学書で有名な「メルク・マニュアル」には、「アスピリン中毒」の章に解説があり、
「サリチル酸塩の中では、ウインターグリーンオイル(冬緑油、ヒメコウジの精油)の主成分である
サリチル酸メチルが最も強い」とされています。
http://mmh.banyu.co.jp/mmhe2j/sec24/ch297/ch297c.html
「ヒメコウジ」って何?・・・と思って調べてみると、アロマテラピーでは有名な草花のようです。

 「北米原産で、ネイディヴ・アメリカンに昔から使われていた。
 お茶代わりに服用すると肥満や腹痛に効果。
 精油は、サリチル酸メチルが主要成分を占める。鎮痛剤「アスピリン」の元祖。

との記述がありました。
http://pro.tok2.com/~bio/A6_Info/A604_Aroma/A604_AromaEo/NARD/News_Kemo0111.html

また、別のアロマテラピー関連サイトでは、
白樺(バーチ)の皮から採る精油もウインターグリーンと同等なのだとか。
http://www.tradmedicine.com/term/aroma-e.html

要するにサリチル酸が豊富な精油であればどれも一緒、ということで
「テレピン油」=「ウィンターグリーン油」と考えて間違いなさそうです。
ちなみに、アロマテラピー用のバーチ精油にはサリチル酸メチルの濃度は何と95%!
ものすごい高濃度です。グリップ剤の素材としてはコレで十分でしょう。
わざわざ薬局で純度99.99%のサリチル酸メチルを入手する必要はないです。

ネットで「サリチル酸」と検索すれば、植物の多くが
病原体への自己防御機能としてサリチル酸を含むことが分かります。
従って植物精油にサリチル酸が豊富なものは結構多いわけですね。
ツーンと来る刺激臭があるものは多かれ少なかれ同じだと。

ひるがえって、パラゴン黒缶についてネットで検索してみたところ、
米国CSPC(消費者製品保安委員会)の1995年11月17日付けリリース(Release # 96-025)を発見。
http://www.cpsc.gov/cpscpub/prerel/prhtml96/96025.html
 「パラゴン黒缶には指定薬品であるサリチル酸メチルが含まれており、
 幼児が誤って開封するようなことのないパッケージ(栓)を装備すべきところだが、
 1995年8月までに出荷された約75,000本が基準を満たしていなかったので回収を命じた」
という内容です。

先の「メルク・マニュアル」では、
「幼児は小さじ1杯未満のサリチル酸メチルの精油を飲みこむだけで死に至ります」とあります。
取り扱いを誤るといかに危険なものか、お分かりいただけるでしょう(元来、薬と毒は紙一重ですよね)。

テレピン油は浸透性が強く、ゴムを柔らかくする効果もあるそうです。
油絵の具やペンキの溶剤なんですから推して知るべしですよね。

5-56を使う理由は既に述べたとおりです。
ゴムを柔らかくして路面への引っかかりによる「機械的な摩擦力」をアップするのが狙いです。

2ストオイルを添加するのは、文中では「持続性」の観点からと説明されていますが、
言ってみればエンジンRCカーが走るコースで路面に残っているオイルのブラックマークを
タイヤ表面に人工的に作り出すようなものですよね。
ゴムに「粘着力」を与え、粘着力による摩擦力を強化し、
機械的摩擦力と合わせたトータルな摩擦力をアップする目的、と考えるのが妥当でしょう。

 #ひと口に「摩擦」と言っても発生原因には2通りあります。
 #「機械的な摩擦」と「分子間力による摩擦」です。
 #粘着して摩擦するのは路面の引っ掛かりとは関係なく、鏡状の表面でも起こりますから
 #これはまさに分子間力のなせる技です。

(06/29/2006:ウィンターグリーン油とテレピン油の関係について加筆修正しました)