Ferrari 312T3(復刻版) (Item 49198、2001年11月発売、税別定価17,500円) 「タイレルP34」に続く第2世代のF1シリーズとして、1979年に発売された オリジナル版のボディを復刻、F103シャシーと組み合わせて現代に蘇らせたのが 312T3復刻版キットです。 といっても特別な変更は一切なくて、唯一、新しいのは専用のバンパーだけ。 ボディマウントもウイングステーもタイヤ&ホイールも、 すべて既存パーツを巧みに組み合わせて流用しています。 ですから、皆さんがお手持ちのF103に足りないパーツを追加してやれば、簡単に 312T3にコンバートできちゃうんです。 タミヤのオンライン通販では、残念ながら05年に入って ボディ・タイヤの取り扱いを終了してしまいましたが、 モデラーズギャラリーやタミヤフェアなどでまだまだゲットできるチャンスはあるはず。 もちろんカスタマーサービスから取り寄せるテもあるでしょう。 押し入れに眠っているF103を懐かしいボディでリニューアル、というのはいかが? タミヤHPの製品案内はこちら |
実は312T3の「復刻」は2種類あるんです。 復刻キットが出た037ラリーやタイレルP34と同じパターンですが、まず先行して2001年にボディとタイヤ(リヤのみ)が1979年当時の金型のままで復刻され、モデラーズギャラリーなどの「催事限定」で発売されました(初版復刻版=Item49177、4000円)。 |
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このボディとリヤタイヤ(ホイール無)は当時のままですから1979年発売の初版シャシーのレストアには好適ですが、F103に搭載するにはリヤウイングステー、ボディマウント、翼端板、フロントバンパーの入手、それからボディ&リヤウイングの簡単な加工が必要です。 バンパーは取り説では「マクラーレンMP4/13用を加工」と指示されてますが、キット化された際に312T3専用品が新たに作られたので、これを流用すれば手間が省けます。カスタマーサービスに「部品番号9334072(単価750円)の312T3用バンパー」と注文すればOKです。合わせて、翼端板(部品番号9404298・袋詰D、350円)、リヤウイングステー(番号不詳、確か780円)、ボディマウントも取り寄せれば完璧ですね。 |
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これに対してF103シャシーキットに同梱のボディは「改訂復刻版」とでも言うべきもので、 初版のアンテナチューブやボディマウントの穴が塞がれ、新たにF103用のボディマウント&ウイングステー用の穴が開けられています。 ポリカボディにもF103用のマウント穴が開いていますから「初版復刻版」とはすぐ区別がつきます。 F103に搭載するならこちらを利用したほうがラクです。カスタマーサービスに「復刻キットに同梱のボディ」と言えば分かるはずですが、事前に在庫を問い合わせてみるべきでしょう。そろそろ切れてもおかしくありません。またこちらのボディだと、ホントに「ボディだけ」ですから、上記のバンパー、袋詰D、ウイングステー、ボディマウントのほか、Hパーツ(メッキ部品、730円)やステッカー、ドライバー部品も別途必要になってきますので念のため。う〜ん、取り説がないとかなり面倒くさいですね。 | |
なおボディによって搭載できるバッテリーが異なります。プラボディには1700MPか4セルパック(非タミヤ)を。ポリカボディには6セルパックが搭載可能です。また上手な塗装には少々コツが要ります。後でご説明します。 | |
ここでご紹介するマシンは、312T3復刻版キットそのものではなくて、
04年8月22日に埼玉・NRCスタジアムで開催された「第4回DDSミーティング」で実際に走行し、総合4位をゲットしたマシンです。オールドマシンの参加を促すため1100g+540SH(ジョンソン不可)という重量規定だったんですが、ボディの塗装に追われて事前走行の時間がなく、タイヤもシャシーも7年ぶり、搭載メカも当時のまま(フタバ113F受信機+キーエンスA-01)、というぶっつけ本番状態でのリザルトなので悪くはないでしょう。実際、クルマの動きは終始好調で、調整らしい調整もまったく必要ありませんでした。ただし、もちろんレースではスポンジタイヤでしたけどね! シャシー底面からみると、312T3キットの大きな特徴である「特製の大型バンパー」がよく分かります。このバンパーはフロントウイングの取り付けステーを兼ねています。 |
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また、現在は1/12スケールオンロード(いわゆる「トゥエルブ」)を除くとまず見ることができなくなったTバーによるリヤセクションの構成もお分かりいただけるでしょう。 1990年代までのオンロードRCモデルではむしろこのシンプルな構造が「当たり前」でした。FRP製のTバーのたわみ(しなり)を巧みに利用していることから、Tバーにストレスが加わりやすく劣化が早い、というのが唯一の泣き所ですが、「安い」「メンテが簡単」「速い」と三拍子揃っていただけに、1980年代から長年にわたって利用されてきた、実績と由緒ある構造なのです。 ちなみに作例ではop.146の2.5mm厚カーボンシャシー(6000円)にop.169のソフトTバー(600円)を組み合わせています。 ソフトTバーは樹脂分の比率を上げたうえ、板厚もノーマルの1.55mm(実測)から1.3mm(実測)に薄くしたものです。 |
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ダイレクトドライブ(DD)型F1シャシーの最終進化形であるF103シャシーは1993年9月の発売ですが、フェラーリF189以来のF1デザインの常識となった、極端にフロントセクションを細く絞り込んだ造形を再現するため、非常にメインシャシー幅の細い独特な形状をしています。前モデルのF102までは、メインシャシーのシナリによるロールポイント制御を意識して、フロント部分にくびれを設ける1980年代からの伝統的なオンロードシャシーのデザインを踏襲していたのですが、F103ではキット発売と同時にカーボンシャシーがoptとして発売されるという、タミヤとしても前例のない特別扱いを受けました。最初からカーボンの使用を前提とすることで、従来よりグンとシャシー幅を絞ることができたわけです。 | |
実はコレには伏線があります。F102のモデル末期、1993年の夏なんですが、「隠れopt」として催事限定でF102用のカーボンシャシーをタミヤが出したところ、これが大変な優れモノであると当時のF1エキスパート連中に認知され、「瞬間蒸発」するほど密かな大人気を博したのです。93年までのタミヤGPではF1エキスパートクラスの車重規定が1000g未満だったので、カーボンシャシーで1000gを切るクルマが実現してしまうと、カーボンシャシーでないとビッグイベントでは勝負にならなくなってきたのです。ただし、ほとんどのエキスパートは発売と同時にF103に移行したので、残念ながら93年から始まった「タミヤ世界戦」でF102カーボン仕様が活躍する機会は1度もありませんでしたが。 カーボンシャシーでもシナリは当然発生するのですが、その量は従来のFRPよりはるかに少なく、しかも戻りも速くなります。 シャシーのシナリに頼らず、シャシーは「剛体」として考え、前後グリップのセッティングはサスペンション、すなわち「バネ」でもっぱら決定する、という、 |
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1/12オンロードレーサー(いわゆる「トゥエルブ」)や
プロ10シャシーと同じ発想に基づいて、F103は根本から新しいメインシャシーを得たわけです。
シャシー剛性については当初からoptのカーボンシャシーが基準でしたから、
レースでマトモに走るにはカーボンシャシーが「必須」です。
もちろんノーマルのFRPでも走行はできるんですが、重いし、ヨレるし、ということで、
レースに出ても勝ち目はありませんでした。FRPシャシーはあくまで「入門用」です。 なお、F103はシャシー剛性アップのさまざまな手段が提供された点でユニークな存在でした。まず、FRPシャシーには 「安価にカーボン並みの剛性が得られる」という触れ込みで、FRP製のアッパーデッキセットが後からoptに追加されました。 また、カーボンシャシーはキット発売当初から設定されていた2.5mm厚に加えて、後に3.2mm厚のハードタイプが追加され、 最終的にはこちらが標準的な仕様になりました。エキスパートの多くは、1/12と同様、シャシーのネジれが生じやすい ダブルデッキを避けて単板シャシーを好みました。ただ、グリップの低いコースやゴムタイヤ仕様(フロントグリップが負け気味で曲がらない)では シャシーがしなってフロントグリップを稼ぎやすい |
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薄手の2.5mm厚のほうが好まれるケースもあったので、3.2mmカーボンが絶対、というわけではありません。 ちなみに、モデラーズギャラリーなど「ジャンク市」でしばしば販売されていたのはハードタイプのほうですが、カーボン板材の 品質管理が悪く、規格外として弾かれたものが出されていたようで、厚みはかなりバラバラでした。もちろん、同じ プライ(積層)数ならば薄いほうが密度が高くていいわけです。 また、F103には後にoptでリンク式のフロントサス(左写真)が発売されました。面圧変化が少ない「ゴムタイヤに マッチするサス」としてF103LMで「復権」しましたが、リンクサス発売当時のタイヤはスポンジのみでしたので、 エキスパートの多くは作例のようにノーマルを使い続けました。 理由は、「リンクサスはガタが大きいから」です。サスボール部分が致命的にガタガタなのです。 挙動がシビアなDDカーにステアリングのガタは許されません。 |
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ノーマルサスは発売当初からキャンバー設定が不適切で、タイヤが片減りする決定的な欠陥がありました
(これは残念ながら生産終了まで改善されませんでした)。リンクサスはネガキャンが付いて
その問題が解消されるのがひとつのウリだったのです。うがった見方をすれば、リンクサスが売れなくなるから、
あえてノーマルのキャンバー改修をしなかったのかも知れませんね。
ただ、スポンジタイヤでは片減りなんて「見た目」以外には特に問題になりません
(長距離を走る1/8GPとかでは問題ですが)。ハンドリングのほうがよっぽど重要なので皆さんノーマルに固執したわけです。 それでも「片減り」がどうにも気になる、という人は多く、「ノーマルサスで何とかネガティブキャンバーを付けられないだろうか?」 というテーマはF103発売当初からの大きなテーマとして、当時のユーザーはこぞってモディファイに取り組んでいました。 |
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代表的な改造例としては、 1)3mmタッピングビスで締め付けるアップライト側の上下サスアームの合わせ目の間にシムを仕込む、 2)4mmアルミ皿ビスで締め付けるサスアーム中央部の上側のパーツを削る、ないしは切り落とし、4mmワッシャーで厚みを調整する、 というものがありました。とにかく「アッパー側のキングピン穴位置を内側に寄せる」ような加工をすれば良いわけです。 ただし、 これらの加工は確か発売翌年の1994年シーズンからはタミヤGPでは禁止になってしまいました。なのでタミヤGPでF103が走らなくなって久しい 今でも、あえて手を加えずに走っている人もいるかと思います。サスアームは一番よく壊すパーツなので単に「加工が面倒くさい」ということもありますよね(笑)。 |