posted on June 23, 2003
last updated on Jan 4, 2004
タミヤRC製品・即買いカタログ
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RC Car Trend モーター研究室

<その36:カワダ「R-COAT」シリーズ徹底解剖!>


<お礼とお断り>
今回の企画は、RCTの各種BBSで常連の「でゅらん」さんよりサンプルをご提供をいただき、実現しました。このページの利用者に代わって、でゅらんさんに感謝いたします。なお、でゅらんさんはカワダないし特定のショップとは一切関係ない、ごく普通のRCファンです。あくまで「モーター研」でR-COATシリーズをチェックしてみて欲しい、というのがサンプル提供の趣旨です。

ご本人の意向により、テスト済みモーターの読者プレゼントを募集しましたが、最終的に21名という多数のご応募をいただきました。大変ありがとうございました。当選倍率10倍というのはあまりに申し訳ないので、急遽、つまらないものですがプレゼントを2つ増やし(内容はナイショ!)、当選者4名とさせていただきました。
<VストックR>愛知県 RX-7+さん
<VSストックR>東京都・tsunさん
<特別賞>広島県・たまさん、愛知県・トリガーさん
以上です。なおプレゼントは7/24付けで発送済です。



<R-COATって?>
カワダから2003年モデルとして他社に先駆けてリリースされた最新のリビルダブル23Tストックが「R-COAT」シリーズです。ブラシタイプはスタンドアップとレイダウンの2種類が用意されたこのモーター、ただ単に(1)ブラシ素材の改良、(2)マグネット強化、(3)モーターカンの改良(厚み、形状)、といった従来のチューニング手法を踏襲・発展させただけのモノではありません。「ローターの放熱」という新しいコンセプトを盛り込み、従来の23Tストックとは異なる次元を切り拓こうという意欲作なのです。

この背景には、23Tモーターのマグネットが年々強化され、ブラシもどんどん低抵抗化が進み、バッテリーも大容量化した結果、JMRCAスポーツクラスのギヤ比はついに5.0を切るまでにハイギヤード化・ハイスピード化したという事情があります。オーバルレースと見まがうばかりの極端なハイギヤード化は、当然ながらモーターに猛烈な負荷をかけます。結果、モーター表面ですら走行直後は100度前後に達するのが「当たり前」な時代になってしまいました。モーター内部、特に、熱源であるローターについては、走行中に150度にも達しているようです。

ところが、ローター巻線の素材である「銅」は、温度変化による抵抗値の変化の幅が結構大きい金属です。25度から90度への変化幅なら65度しかありませんが、これが155度にもなると、その変化幅は2倍の130度にもなります。当然、ローターの電気抵抗が大幅に増えますから、マグネットの磁力低下も加わって、出力は目に見えて低下します。いわゆる「熱ダレ」です。出力が落ちるとドライバーというのはアクセル開度を増やして対応しようとするのが「人情」なので燃費はますます悪化し、熱ももっと出る、という悪循環です。

この悪循環の輪を断ち切るには、ローターを積極的に冷やしてやることが根本的な対策、ということになります。そこでカワダが採用した秘密兵器が「R-COAT」なわけですが、この「R-COAT」なるもの、従来の放熱対策とはまったく違います。なんと「塗装」です。放熱塗装。それも、発熱源であるローターの巻き線そのものに塗ってしまった、という発想が斬新です。従来、「放熱対策」というと、ローターにファンをつける(シンナゴヤ系モーター各種やダイナテック02H、AYK・GZ-1200(初代)など)といった最も分かりやすい対策から、ローターコアを斜めに成型(AYK・GZ-1200R、京商・ルマン480ゴールドなど)したり、コアの端を垂直に折り曲げて(ヨコモ・初代プロストック)ファンの機能を持たせたり、モーターカン表面にフィン加工(タミヤ・アクトパワーTRFチューン)したり、凹凸の多い梨地塗装(トリニティ・D5)をしたり、といった工夫がなされてきましたが、いずれも巻線やコミュテーター、ブラシといった熱の発生源そのものをどうする、というのではなくて、熱が伝わった先での対策、ということであり、言ってみれば「モトに手をつけないで対症療法してる」という感じでした。

n斜め(スキュード)ローターを採用したAYK・GZ-1200Rモーター それでも、ローターで風を起こしてクーリングする、というのは割と有効なアイデアでしたが、いかんせん本格的なファンを取り付けると、特に高回転域において空気抵抗によるロスがバカにならないらしく、また、当然ながら低回転域では効果が薄くなり、実走行ではなかなか狙ったような性能が発揮できなかったのでしょう、いずれもほとんどが1代限りで終わってしまいました。また、斜め(スキュード)コアのアイデアも既に20年前に捨て去られてしまいました(右写真はAYK・GZ-1200Rモーターの例)。考えてみると、スキュードコアというのはローターの切り替えタイミングを滑らかにする反面、実は進角設定の選択幅を逆に狭める結果になっていたのかなあと感じます。産業用に使われる多極モーターではスキュードコアが常識ですが、RC用モーターは3極しかありません。ローターの極性は一気に「バン」と切り替わった方が効率面では有利なのかなあと。モーターのパワーアップには効率アップがひとつの決め手になりますから、効率面で不利なのであれば、廃れてしまったのにも合点が行きます。


<まずは外観チェックから>

ではまず、「お約束」の外観チェックです。
今回入手したのは、以下の2種類です。いずれもJRM/JMRCA認定のリビルダブル23Tストック規格適合品です。
近日発売のレイダウンタイプも後日テスト予定ですが、このページでは、スタンドアップブラシの2種を先行レポートします。
(1)VストックモーターR(スタンドアップブラシ、品番M1-231B、価格2980円)
(2)VSストックモーターR(スタンドアップブラシ、品番M1-236B、価格2980円)

<ローターの違い>
(2)H型ローター (1)V型ローター いずれも効率重視のスタンドアップブラシを採用し、ブラシ素材の見直しと14Gマグネット(磁束密度1400ガウス[=140ミリテスラ]という意味ですが、TDKではこのような呼び方はしなとのこと。OEM製造元と推測される相模マイクロ(サガミモーター)社ないしRC業界内部の便宜的な呼称です)採用でパワーアップを図っている点は共通ですが、ローター形状の違いで差を作っています。

(1)のVストック(M1-231B)は、ローター頂点をフラットに削り、ローター中央のエアギャップを広げてトルクを意図的に軽めに設定したコア形状のV型ローターを採用。ピークパワーは低くなりますが、全域でフラットな特性を得られ、ローターの軽量化による吹けあがりの改善と相まって、扱いやすい操縦性が狙われています。これに対して、(2)のVSストック(M1-236B)は、マグネット表面に対して均一なスキ間(エアギャップ)を維持する一般的なコア形状に、磁気進角をつけるホールショット(貫通穴)加工を施したH型ローターを採用し、ローター頂点を中心に強力な磁界を得て「ピックアップが良い」という説明です。ピックアップというと、コーナー立ち上がりなど中〜低速域の出力が大きい、ということと理解しますが、確かに、コアの設計意図としては、ローター外径が同じという条件下であれば、V型とH型では上記のとおりの違いが想定されます。さあ、果たしてこうした設計意図のとおりにモーターは回るのでしょうか??

(2)H型ローター (1)V型ローター なお、R-COATで隠れているのでしょうか、サンプルのH型ローターには、該当するホールショット加工は見当たりませんでした。ローター外周の形状が大きく違いますから、V型とH型の区別はすぐにつくと思いますが。また、V型もH型もいずれもローターコアはHPI/Orionの23Tストック同様、真円度を上げる外径レーズ加工(コミュテータと同じ要領の切削加工で、通常は上掲のGZ-1200Rローター表面のような鏡面状になります)が施されるという徹底ぶり。ただしこのコダわりも、R-COATで真っ黒、デコボコに塗られてしまっているせいで、ホントにやってるかどうか確認のしようがありませんけど。そういうところに、ちょっと贅沢を感じますね。2980円という価格もやむを得ない内容なのかも知れません。あくまでも、価格に見合う性能が出ればこそ、の話ですが・・・。

<コミュ径は7.6mm>
タミヤGPでも2002年から23Tストックの分解整備がOKとなり、コミュテーター研磨によってコミュ径を積極的に変更し、最適値に追い込むことによって効率を引き上げ、ある程度のパワーアップを狙うことが大っぴらに認められるようになりました。RCTのBBSでもここにきてブラシサイズとコミュテーター径の関係が俄然注目を集めています。従来から、ブラシホルダーの金具部分のみを外し、5×4mmブラシ式ストックモーターのコミュ研磨ができる研磨機はあり、タミヤGP規定でも特に禁止条項はなかったのですが、道義的には「積極的に触っていい箇所」とは言いがたかったので、RCTとしてはあえて手をつけていませんでした。しかし、リビルダブルタイプになって、コミュ研磨そのものが「前提」みたいになってしまいましたから、もうこのような心配はありません。今は積極的にコミュ径と出力の関係に注目しています。

そこで早速、V/VSストックモーターのコミュ径に注目したところ、スタンドアップブラシ用はいずれも「7.6mm」で仕上げられていました。ちなみに、取扱説明書では「7.2mm以下に削り込まないでください」とありました。RCTのBBSでは、まだ仮説の段階ですが、コミュ間の電極のすき間を考慮すると「スタンドアップブラシのコミュ径は7.3〜4mmくらいがベストではないか?」という見解が出ていますから、そのへんを参考にすると、7.6mmというのは多少コミュ研磨のマージンを残した設定、と言えるでしょう。逆に言うと、「カツカツ」を追求するならあらかじめコミュ研磨必須、ということですね。ただ、コミュ研磨についてやり出すとまた話が長くなるので、このテーマはまた別の機会に!

<進角はいずれも19度?>
これはメーカーによってポリシーが分かれるところですが、ヨコモが初代T-MAXでやっていたように、モータータイプによって細かく進角設定を刻むメーカーもないわけではないので、一応チェックしました。当初、エンドベル進角はいずれのタイプもJRM/JMRCA限度いっぱいの「20度」であるように見えたのですが、続く「その37」の執筆時点で改めて厳密に比較してみたところ、スタンドアップブラシ、レイダウンブラシのいずれのタイプも進角は同じでしたが、よくよく見ると、20度にはごくわずか足りず、19度くらいになっています。これが意図的なものなのか、それとも、ある程度車検時のアローアンス(測定誤差)を考えたものなのか、定かではありませんが、キッチリ「20度」でなかったことは確かです。ここにお詫びして記述を訂正します(03年6月27日加筆)。

一方、マグネットが付くモーター缶側ですが、V/VSストックのモーター缶はタミヤのスーパーストック缶と同様、プレスによる表面のデコボコがなく、マグネットの位置決めが自由なデザインになっています。缶内のマグネット位置をズラすことで結果的に進角を変える余地が残されているわけです。このほうが、エンドベルの設計はそのままに、ローターやブラシタイプごとの細かい進角設定も簡単ですから合理的ですよね。

もちろん、ユーザーが事後的に手を加えるのは違反だし、もともとベストを追求してるわけですから、ヘタに手を加えてもかえって悪くなることのほうが多いと思うんですが、モノには製造誤差がつきもの。実はタミヤのスーパーストック缶では、この「製造誤差」がかなり大きいので、カワダのこの缶を見た瞬間、やはり同様の懸念を抱いたわけです。しかし、チェックしてみたところ、いずれも見て分かるようなバラツキはなく、かなり高精度で位置決めされているようなのでひと安心。もちろん、2個づつ開いている取り付けビス穴を中心に左右対称になっています。見てすぐ気がつくような、±1度くらいマグネット取り付け角のバラツキがあるスーパーストック缶とはちょっと違います。

<エンドベルリングはスチール製>
エンドベルを止めるネジが切ってあるリングはスチール製です。各社で広く使われている汎用部品で、形状、材質、仕上げとも特に目新しいものはありません。エンドベルリングにはアルミ製もありますが、スチール製だと、この部分もマグネットで磁化され、擬似的にマグネットの横幅をサイズアップしたような格好になるため、合法的に若干のトルクアップが期待できます。モーター特性との兼ね合いを考えて選ぶ部品ですから、やみくもにスチールのほうがいいとか、そういった乱暴な話にはならないのですが、23Tストックはローター側でコアの積層数や巻線の直径、巻き数などに規制がかかっているため、磁石でトルクアップして抵抗の低いブラシで大電流を流し、思いっきりギヤ比を上げて(小さくして)負荷をかける使い方が、パワーを搾り出す基本的な方法論ですから、自ずとチューニングの方向性も決まってしまっています。一般論としてはやはりアルミ製よりスチール製のほうがより高い(小さい)ギヤ比が使えて有利なんだろうとは思います。ローターの転がりが良くなるのはアルミ製ですけどね。

スチール製はマグネットにくっついてしまうので、メンテナンスが面倒な場合がないわけではありません。そのため、スチールタイプのエンドベルリングは、内径がローター径より大きくなっていて、マグネットに張り付いたままでもローターが抜けるようになっています。ちなみにアルミ製のタイプでは、識別の目的もあるのでしょうか、内径はローター径より小さくなっているのが通例ですよね(というか各社同じモノを使っている)。

<スペーサーにもフリクション削減の配慮がニクい>
今回、モーターを開けてみてニヤリとしたのがコレ。23Tストックも来るとこまで来ましたね〜(笑)。ついにスペーサーワッシャーにテフロン製が登場。軸受けメタル側面との摩擦軽減、磁気に影響されないので取扱がラク、といったメリットが容易に思いつきますが、確実にスチール製よりコストアップします。コストに見合う性能アップがあるのか!? いや、ほとんど関係なくても「いいと思うことはすべてやるんだ!!」と言われればそれまで、というのがレースの世界ですから・・・。せっかくのテフロンワッシャーですから、ユーザーの方はくれぐれも組み方を間違えないように。エンドベル側はテフロンワッシャーを外側に組み付けてメタルとの側面摩擦を減らしますが、ピニオン側は逆に内側に組み付けてローター側の出っ張りとテフロンワッシャーが擦れるようにしたほうが、テフロンワッシャーをメタル軸受けに擦らせるより接触面積的には有利です。ご注意!!

<ブラシは最新スペック>
ブラシは、この新シリーズのために新たに用意された最新スペック。見るからにメタリック感が高く、いかにも「金属混入率高いです〜」という感じです。金属の配合率が高い、ということは、熱伝導率は上がってコミュから発生する摩擦熱の放出には有利ですが、相応にブラシが硬くなり滑りも悪くなる、というのが定石なのですが、実際にはそんなにガチガチ、というわけでもありません。ごくイマドキのフツーです。10パックも走るとブラシカスで思いっきり内部ショート起こしますから洗浄はマメにやったほうが良さそうです。今回はタミヤ丸Tブラシ(op.581レーシングモーターブラシ・スタンダードタイプ)との比較もやってみます。

<ブラシスプリングは210g前後>
今回からモーター研に登場する「新兵器」がイーグル模型から出たスプリングダイノ(バネ圧測定器)です。計測に使ったのは写真の「#1862:スプリングダイノ1」のほうで、これはブラシスプリングとダンパースプリングが計れますが、「ダイノ2」といってブラシスプリングのみに対応し、サイズがほぼ半分くらいの機種もあります。計測機構は同一なので精度は同一です。この計測器でようやくマトモなテンション測定ができるようになりましたので、いろいろとデータを蓄積していきたいと思います。

まずは今回のモーター2タイプについてですが、おおむね、205〜215gの幅で収まっているようで、中心的な値は210gあたりと見ました。スプリングの個体差で10g程度、計測誤差として10g程度あって、最大20gくらい計測値がブレましたが、何度か計測してみて、収束したのはこのあたりでした。

ちなみに、ダイノテスト時のベンチマークとして使うことにしている、タミヤ・タイプT(タイプSも共通)の標準ブラシスプリングですが、こちらのテンションはおおよそ185g前後でした。また、参考までに、同時に計測したタイプR/RRの標準スプリングのテンションは140g前後だったことを記しておきます。個体差はさほど大きくなくて、タイプT/S用で10g未満、タイプR/RR用で5g強程度に収まっていたようです。それにしてもこれらのスプリングがずいぶんソフトに思えるくらい、V/VSストックのブラシスプリングは強烈なわけです。パワーが出ないと単にブラシの摩擦で損失が拡大し「回らないモーター」になってしまいます。さあ、果たしてどうでしょうか?

<エンドベル>
V/VSストックのエンドベルは、特にコレといった目新しいものはありませんが、基本はキッチリ押さえられています。精度ももちろんですが、+-で色違いのヒートシンク、3連装のタンタルコンデンサ(ノイズキラー用)、金メッキブラシホルダー、テーパードメタル軸受け、といったところです。ブラシホルダー回りは、金メッキなのでブラシのネジ止め部との導通は良さそうです(ブラシのピッグテール(リード線)をハンダ付けしちゃう人には関係ないんですけどね)。ただ、デザイン的にはもう何年も前のストックモーターから変わっていませんから、古ぼけた感じがないわけでもありません。ブラシダンパーもないですし。まあ必要ないですが。エンドベルでの放熱についてはもうちょっと積極的に考えたほうが良かったかなあ。あ、コレは次の新製品に盛り込むネタでしょうか、もしかして!?(笑)


***以下の試験は、すべて気温25度±1度の条件で実施しました***

<測定編>

ではいよいよ計測を始めます。まずは「基本性能」ということで、通常の試験条件で、メーカー出荷状態を計測してみます。この時点では、「モーターの過熱」は一切考慮しておらず、基本的に「室温状態=走行開始時点での性能」と考えてください。

<Vストック(M1-231B)>

(実線はVストック(M1-231B)、点線はタミヤ・スーパーストック・タイプT基準データ(<その18>と同じ))


<VSストック(M1-236B)>

(実線はVSストック(M1-236B)、点線はタミヤ・スーパーストック・タイプT基準データ(<その18>と同じ))


VストックとVSストックを直接比較すると、こうなってます。

(実線はVSストック(M1-236B)、点線はVストック(M1-231B))


X軸をトルクにしてみると、同じ負荷(ギヤ比)をかけた場合の特性の違いが浮き彫りになります。特に、常用負荷領域でのVSストックの回転数の伸びと全域におけるパワーの水準は圧倒的な差です。


(実線はVSストック(M1-236B)、点線はVストック(M1-231B))



(実線はVSストック(M1-236B)、点線はVストック(M1-231B))


なんだかVとVSの違いって、単に「パワーのあるなし」になってるだけじゃん、みたいな・・・(汗)。トルクも最大出力も回転数も、ぜぇ〜んぶVSのほうが上回ってるわけだし・・・。最大出力で見れば、Vだって2年前のタイプT並みにありますが、Vが採用するトルク細めのV型ローターにとっては、やはりスプリングテンションが強すぎるのでしょう。もっと上まで吹けるのかと思っていたのでガッカリです。最新スペックのマグネットのおかげで、トルクはそこそこの水準を満たしているので、ギヤ比を高めに取ってやるか、あるいはタイプTと同じような200g未満のごくフツーのテンションのブラシスプリングにしてやることで、ある程度は改善できそうです。というか、210gのスプリングを使いながら、もともと高回転タイプのタイプT並みの吹けあがりを確保したVSストックのバランスの秀逸さをほめるべきなのかも。

ただし、燃費が厳しい時には、Vを積極的に使いたくなるケースもあるかも知れません。なにしろVSは130W級の大出力、3300でも8分は厳しいかも知れません。まあ、それならギヤ比を落とせばいいんで、わざわざモーターを積み替える必要はないと思いますが、「遊び」なら、パワーより燃費重視の23Tストックユーザーもいるでしょうから、そういうお気楽系ドライバーにもR-COATのメリットを堪能してもらおうと思ったら、Vをどうぞ、ということなのかも知れません。でも、わざわざ同じカネ払って性能のバランスが悪いモーターをあえて買うでしょうか? ちょっと価格戦略的に問題があるような気が・・・。私なら、燃費やパワーはバッテリーやギヤ比で調整することにして、モーターとしてはやはりVSをおススメしますね(ただし、プレゼントにVが当たっても文句言わないでネ!)

<付属ブラシの実力は?>

モーター標準ブラシは、当然ながら最新スペックが盛り込まれているものと思われますが、ブラシ単独の客観的な性能評価というのはなかなか難しいもので、ユーザーの多くは経験とフィーリング、メーカーのアドバイスという2次的な情報に頼らざるを得ないのが実情です。しかし、RCTではタミヤ製ブラシという「基準値」があるので、データを比較することで、ある程度性能比較ができます。今回は、「その27」でPower Maxシルバーブラシを計測した際にベンチマークとした、当研究室で「丸Tタイプ」と称しているブラシ「op.581レーシングモーターブラシ(スタンダードタイプ)」と交換して計測値を比較してみました。「タミヤ丸T」との性能差が分かれば、他ブラシとの差も相対比較(%での差異)もできるというわけです。ホントは「その27」で使ったスーパーモディファイド11Tで測定できれば直接比較できていいのですが、残念ながらこのモーターは既に実走行に使ってしまいました。悪しからず。


(計測はVストック(M1-231B)を使用、
実線はタミヤ製op.581ブラシでの計測値、点線は上掲のVストック基準データ)


ん? ありゃ?? タミヤ丸Tのほうが好結果になっちまいました!! コレはどういうこと?
ブラシのせいかな〜、と思って急遽、VSについていたブラシに交換してみましたが、ご覧のとおり、 やや改善は見られましたがやはりタミヤ丸Tを超えるには至りません。んん〜丸T恐るべし!かなりいいブラシですねやっぱり。おススメです!!


(計測はVストック(M1-231B)を使用、
実線はVストックにVSストック付属ブラシを装着した計測値、点線は上掲のVストック基準データ)


<温度上昇したときの変化は?>

ではいよいよ、温度変化の影響を検証してみます。ブラシやコミュのコンディション変化を考えると、何度も何度もテストしてもあまり意味がないので(皆さんレースにはコミュ研磨済みのベストコンディションで臨むわけでしょう?)、1パック回したときの状態をチェックしてみます。ただし、そのまま3300HVを1パック分回して計測しても「途中経過」が分かりにくいですから、完全放電後に1200mAhずつ充電したRC2400SPを用意し、おおよそ1000mAhずつ消費させて計測することにしました。また、モーターに負荷をかけて実際のランタイムに近づけるため、ダイノ計測で使うフライホイールを装着しました。さらに、計測にかけるまでにモーターが冷えてしまわないよう、最初からダイノに取り付けた状態で負荷運転を行いました。

まずは、この条件でどのようなことになるのか、小手調べにタミヤ・スーパーストック23TタイプRで予備調査を行ってみました。タイプRを選んだのは、レイダウンブラシを採用し、燃費が悪く、熱も出やすいからです。熱的に一番不利なモーターを選んだ、と考えてください。

実際に回してみると、バッテリーは、フライホイールを付けていても結構持ちました。1000mAhを食い尽くすのにおおよそ15分かかり、とてもじゃありませんが実走行の状況をシミュレートできる感じではありません。しかし、赤外線温度計で測ると、エンドベル周辺は60度以上になっていることが確認できました。触ると、ちょっと暖かい、という程度なのですが、これでどのくらい違ってくるのでしょうか。モノは試してみなきゃ分かりません。

<1回目(約1000mAh消費後)>

(計測はタミヤ・タイプRを使用、 実線は負荷運転1回目終了後、点線は試験直前に測った常温時の値))



(計測はタミヤ・タイプRを使用、 実線は負荷運転1回目終了後、点線は試験直前に測った常温時の値))



(計測はタミヤ・タイプRを使用、 実線は負荷運転1回目終了後、点線は試験直前に測った常温時の値))


おお〜、結構、違ってきましたね!同じギヤ比(負荷)での変化は、2枚目の「トルク」を横軸にしたグラフを見れば一目瞭然です。数値的にも、ピーク出力なんて、24Wも落ちちゃいました。率にして18.1%のダウンです。「熱ダレ」ってこんなにすごいんだ〜、ということを始めて知りましたね。もっとも、実際の走行条件では、発熱に伴ってバッテリーの放電特性がアップするため、バッテリーの端子電圧の上昇で補償され、走行中のモーター出力はここまで極端に下がることはありません。でも、熱ダレで2〜3割パワーダウンする、というのはこの程度の発熱でも起こるんだ、ということは知って置いて損ではないでしょう。

それでは次に、もう1000mAh消費させてみましょう・・・すると、あれれ、エンドベルの温度が60度以上に上がりません。この試験条件では、冷却速度との均衡点が60度付近になってしまったようです。しかし、冷却が行き届かないローター内部は、時間の経過とともに1回目よりも少しは熱くなっているはず。

<2回目(約2000mAh消費後)>

(計測はタミヤ・タイプRを使用、 実線は負荷運転2回目終了後、点線は常温時の値))


というわけで計測した結果はこのとおり。常温から比べるとピークパワーは22.2%ダウンとなりました。やはり、多少は熱の影響がさらに出た感じです。しかし、これ以上やってもあまり意味はなさそうなので、とりあえずタイプRでの試験はここまでとします。

さて次はいよいよR-COATの登場です!
果たしてどうでしょうか?
1本目を回してみると・・・熱い熱い!エンドベルがタイプRより開口部が大きいせいでしょうか、温度計が直接コミュテータ接触部の温度をキャッチしたようで、80度なんていうとんでもない数字が!まあ、このくらいが実際のところなんでしょうねきっと。

<1回目(約1000mAh消費後)>

(計測はVストック(M1-231B)を使用、 実線は負荷運転1回目終了後、点線は常温時の値))



(計測はVストック(M1-231B)を使用、 実線は負荷運転1回目終了後、点線は常温時の値))



(計測はVストック(M1-231B)を使用、 実線は負荷運転1回目終了後、点線は常温時の値))


おおっ!やはり宣伝文句はウソではなかったようです!!出力のダウン率はわずか7.5%に過ぎません。 上掲のタイプRと比べると、明らかに落ち込みが少ないですね!こりゃあスゴいです。

<2回目(約2000mAh消費後)>

(計測はVストック(M1-231B)を使用、 実線は負荷運転2回目終了後、点線は常温時の値))


当然ながら2回目もこんな感じ。常温時からのピークパワーのダウン率は12.7%にとどまっています。
この格差は温度が今回計測のおよそ2倍になる120〜150度とかいう領域では、もっと差がつくわけですから、このモーター、これからの暑い時期、なかなか武器になるかも知れませんね。

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