posted on 6/1/2005
last updated on 10/17/2006
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RC Car Trend モーター研究室

<その44:ヨコモ・プロストック2考察(13T,15T編)>



<今度は13Tと15Tをトライ!>
「その32」でプロストック2の最高峰である11ターンモデルをご紹介したのは2003年の 2月でしたが、幅広いラインアップと定価1500円(実売1050円!)という540モーター並みの手軽さがウケて、 発売後5年を超えた現在でも非常に良く売れているようです。
(おことわり)都合により公開が06年10月まで延びてしまいましたが、本稿は05年5〜6月時点での状況に基づき執筆されたものです。

そこで今回は、「スーパーファイターG」など入門用バギーモデルの「ちょっと過激な走行」に適度なものとして、 13ターン仕様と15ターン仕様のモデルを選び、どのような特性になっているのか検証してみました。念のため申し添えておきますが、 プロストック2の11T、13T、15T、17T、19T、21Tモデルはいずれもダブル巻きで、23T、25T、27T、30T、35Tモデルはシングル巻きです。 巻き線の線径については不明ですが、 11ターンを除くと、いずれも結構ローターにパンパンに巻かれているので、太めの線であることは確かです。 後で計測結果をご覧頂ければ分かるとおり、多分11Tと13Tは同じ線径だと思います。

「スーパーファイターG」や「デザートゲイター」、それから四駆バギー「グラベルハウンド」などは、もともとパーツの強度が540レベルで作られているので あんまりハードな走行には耐えられません。入門者を意識して、それなりにクラッシュ耐性を確保してるから 簡単には壊れないんですが、やみくもにパワーを増やすとバランスが悪くなってしまいます。アンプの容量アップも しないとダメですしね。それに、「スーパーファイターG」などのDT-02シャシーは、設計上のギヤ比が これまでのタミヤの入門用バギーよりも高めに設定されているようで、ギヤ比を「低いほう」=キット標準の17Tピニオンにしても、 11ターンなんて回そうもんなら、3600バッテリーが6分くらいしか持ちそうもありません。 ギヤボックスも加熱で溶けてしまいそうです。

そういう意味で、入門用バギーに8ターンなんて言うのは論外ですし、11ターンでも夏場だと バッテリーコネクターの接触が悪いと溶けてしまうことがありますので、13〜17ターンくらいまでにしておいたほうが 良いと思うわけです。13ターンでも、ジャンプのアクセルワークでウイリーさせたり、姿勢制御したりといった バギー走行の妙味は存分に楽しめます。発熱が酷いとギヤボックス回りが溶けてしまいますから、そういう観点からも 11ターン以下は避けたほうが無難です。使えるアンプの幅も広がりますしね。ただし、入門用アンプの使用は厳禁です。 ここでご紹介するモーターを使用する際には、KO・VFSシリーズやフタバMC800C/400Cといった中級以上のグレードの アンプを使うようにしましょう。価格的には定価15000円以上が目安です。


<計測方法>

今回は「その42」の試験と合わせてデータ取得を行いましたので、計測条件は「その42」とまったく同じです。 つまり温度範囲は25度±2度(公称値)で、実際には一連の計測を通じて23.0〜23.7度でした。 また、計測に際してはブラシのアタリを取った後、各個体につき5回ずつデータを取得、中央値を代表値としました。 なお、サンプル数は予算の都合で1個のみです。従って、従来の経験則から推察すると、個体によるバラつきが最悪の場合 3%程度生じる可能性があります。


<計測結果>


<ヨコ軸:回転数で表示>
(実線はプロストック2・13ターン、点線はプロストック2・15ターン)



<ヨコ軸:トルクで表示>
(実線はプロストック2・13ターン、点線はプロストック2・15ターン)



<ヨコ軸:消費電流で表示>
(実線はプロストック2・13ターン、点線はプロストック2・15ターン)


ちなみに、
「その32」で紹介した11ターンと今回計測した13ターンとの比較はこんな感じです。


<ヨコ軸:消費電流で表示>
(実線はプロストック2・11ターン、点線はプロストック2・13ターン)


<考察>
最大出力、無負荷回転数(推計値)、最大トルクで比較すると、11T、13T、15Tはそれぞれ174.2W/169.0W/157.4W、 41,871rpm/36,054rpm/32,470rpm、171.3Nmm/181.9Nmm/182.9Nmm、という値になっています。 割とキレイにターン数と回転数、出力の序列が整っていることが分かります。これなら安心してターン数を鵜呑みにして モーターを選べそうです。昔のシンナゴヤのモディファイドとかみたいに、巻き線の線径の区切りが大雑把過ぎて ターン数が少ないローターだと極端に巻き線の量が少なくて全然パワーが出ない、といったことはないようですからね。 ただ、若干ですがターン数の少ないほうがトルクは細めの傾向があるようです。 一見するとこちらの記述と矛盾するようですが、 そうではなくて、偶然、これらのモーターの仕様が巻き線の断面積として11T < 13T < 15Tになっている、というだけの話です。

特に、11Tに関しては、これはもう単純に「13Tの高回転版」と割り切ってしまっていいと思います。グラフを見ると、 回転数とトルクが見事に逆相関の関係で裏返しになっていて、出力的にはさほど変わりないことが分かります。 確かに絶対的な最高出力は若干11Tのほうが大きいわけですが、ほとんど差がない、と言っていい範囲です。 ローター巻き線を比較すると、11Tは13Tより巻き数に見合った分、巻き線の断面積が減少していることが 外見上からも分かります。恐らく、同じ線径で巻き数が違うだけなのでしょう。ターン数が接近している ローターではよくある話です。冒頭に書いた「スーパーファイターG」のような、ギヤ比が2種類しか選べないような クルマの場合、ギヤ比は事実上「固定」なのでモーター側で出力を調整してやらなければなりません。 (このあたりの説明が分からない方はこちら) ファイターGはキット標準のギヤ比が高めなので、出力がほぼ同じとはいっても、トルクが細い11Tではモーターとしての効率が 悪化してしまうので、このケースでは13Tのほうが良い、と判断しました。ただ、例えばアソシB4とか、 タミヤ・DF-03(ダークインパクト)みたいに 自由にギヤ比が設定でき、しかも最初からモディファイドモーターの使用が前提になっているようなモデルなら、 積極的に高回転型の11Tで回してあげたほうが、パワーバンドが広くなるのでドライバビリティは向上するはずです。

なお、 13Tと15Tはほぼトルクは拮抗していますから、線径を変えて断面積をほぼ合わせ込んでいるのでしょう。 ただ、電気抵抗(巻き線のインダクタンス)が増える分、断面積(=巻きの量)としては15Tのほうを若干多めにして抵抗増加を相殺できるようにアレンジされてるはずです。

写真のとおり、プロストック2のローターのエアギャップ(ローターと磁石のすき間)はかなり少なめで、安価な磁石を使いながら 結構なトルクを確保するのに一役買っています。「その32」で比較したタミヤ・スーパーモディファイド 11Tのトルクは218.2Nmmもありましたが、実測データから推計される計算上の無負荷回転数は37,631rpmにしかなりませんでした。 軸受けにボールベアリングが入っているのに、です。タミヤ・スーパーストック23T系と共通の最新スペックの マグネットがいかに強力か、ということなんですが、逆に見れば、プロストック2は安い部材でよく頑張ってる、と思います。 そもそもこういったモーターを使うユーザーというのは、レース用ではなくてあくまで「遊び用」なわけですから、 例えばモディファイド缶のベアリング軸受けで4800円の15T、みたいなのを買うくらいなら、 潔くプロストック2の13Tを買えばいいわけです。 どっちが経済的か?といえば、火を見るより明らかでしょう。非常にお買い得のモーターであることを改めて感じました。 「ちょっと刺激が欲しい」サンデードライバーに超お奨めです!

(おわり)


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