<その51:亜鉛メッキ仕様マブチ540SHに迫る> 【2023/2/17補足】 ※本稿は2007年10月公開当時の情報に基づいています。その後2022年2月に、 @本稿で紹介したモーターがItem51673「540-N」(本体価格1200円)として2022年3月に正式に発売され、以後はタミヤGP公認モーターとなること AOPT販売されていたItem53689「540-J」(本体価格1200円)は販売終了となること が発表されています。 なお、Item53689「540-J」の分析データは、モーター研究室「その7」で詳しくレポートしています。 540-J、いわゆる2穴(第三世代)ジョンソンモーターが終売となる理由ですが、正式なコメントを聞いていないのであくまで私的な推察としては、「このモーターを同梱するようなミドルクラスのモデルがなくなった」ことに伴う需要消滅、だと思います。入門用にはモーターが必要ですが、ミドル〜ハイエンドではブラシレスが主流ですから、540-Jは中途半端だ、というわけですね。また、供給元をマブチに絞って原価低減、というのもあると思います。もともとジョンソンンは、バギーブーム時代に、負荷の高いバギーの要求に応える「ちょっとパワフルな540」が欲しかったのと、540S/SHの供給不足に対応できるセカンドソース、というのと、ダイナテック02Hの開発・製造、といった絡みで1980年代後半に関係が始まったわけですが、今回の540-J終売で、タミヤとジョンソン社との絡みは、ローエンドモデル用の「62227ジョンソン」が残るのみ、ということになりそうですね。 ![]() それは2006年春のことでした。3月29日発送のM-03M「スズキスイフト・スーパー1600」を早速ゲットし、 箱を開け、ビニール袋越しに同梱モーターをチラリと見た時のこと。 最初の反応は、「あ〜、また62227ジョンソンかぁ〜」とガッカリでした。 ところがよく見ると、ジョンソン特有のロット記号がありません。「あれ〜、打刻マシンが変わったのかな〜」なんて 思いながらもうちょっと良く見ると、あれれ、この亜鉛メッキ缶のモーター、 マブチ540SHって書いてあるじゃん、と いうことに気付いたのです。 うわ〜、またややこしいことにななってきた・・・(苦笑)。 ![]() もともとRCカー用の540SHは、マブチが模型店向けに単品売りのパッケージもラインアップ している関係で、「見た目」もそれなりに重視され、工業部品用の540と比べてハイグレードな外装仕上げでした。 それでも6V仕様の540Sの頃は、プレスの仕上がりも今のように滑らかではなかったですし、メッキにしても、 エンドベルが白かったごく初期の頃はまだ缶の 仕上げが安っぽくて、現在、ターンバックルシャフト ![]() ただ、メーカーの立場から考えると、「ニッケルメッキ」というのは見方によっては「過剰仕上げ」なわけです。 確かに美観はグッドですが、昔と違って今はoptモーターがわんさか売られている時代、 「どうせすぐにoptのモーターに交換されてしまうようなモノに美観を ![]() まぁソコまでえげつない話じゃなくても、 「性能が問題なのであって見た目はカンケーない、安いほうが吉」というスタンスに立てば、 ここにコストカットの余地が生まれます。また、要求性能を多少落として構わないなら、缶の仕上げ以外の部分でも コストダウンの余地があり得ます。そういう観点から、トイRCに近い属性のXBモデルや入門 用のTT-01に導入されたのが、後処理なしの亜鉛メッキ仕様 ![]() では今回の「亜鉛メッキ缶の540SH」はドウなんでしょう? 単純に62227ジョンソンの「マブチ版」 なんでしょうか? そう思って仔細に観察してみると、どうも62227ジョンソンのようなあからさまな中身の違いは見当たらず、 従来の540SHと変わりません。確かにエンドベルも含めて外装の仕上げだけは思いっきりグレードダウンしていますが (と言っても缶のメッキにもちゃんと最低限の後処理がされているようで、 62227ジョンソンみたいに「指紋で錆びる」と いった風ではないようです)、それだけです。ブラシやローターには ![]() <計測方法> ともあれ、ここまではあくまでも外観調査上での判断。結論は実測すればすぐ分かります。 今回の計測は「その48」の計測と並行して行いました。 ですから計測条件はその48と同じ、 温度範囲は25度±2度(公称値)ながら、実際には初夏ということで26.0〜27.0度と高めの条件でした。 サンプルは06年4月購入のスズキスイフト付属品(540SH-ZN-1)と07年2月購入のマツダRX-7付属品(540SH-ZN-2) ![]() そうそう、540系で問題になりがちな「ナラシ」については、特に意図したチューニング的なことは行っていません。 新品時の「素」の状態を知るにはむしろ邪魔ですし、 ブラシに逆進角が付いているマブチ540SHは正転方向で使う限り 使い込むほどダメになっていく ![]() ただ、およそブラシモーターというのはどれもそうですが、 ド新品状態から回し始めると、ブラシに最低限のアタリが出るまでは、計測するたびに結果は一時的にどんどん良くなっていってしまいます。 ですから、本試験に入る前に、ド新品の状態から 何度かテスト計測を行い、計測値が安定するまで事実上のナラシ運転を実施しています。今回は、平均3V程度で 5分程度のカラ回しをしたのと同等程度の ![]() <計測結果> ![]() 通常、製造から日が浅くコミュテーターの「鮮度」が高い(=コミュの酸化が進んでいない)ほうが良いデータを得やすい(=良く回る)、 というのが540系の「常識」なのですが、今回は古いほうの個体のほうが性能が良い結果になりました。こういうのを「当たり」と 言えばそうなのかも知れません。しょせん62200ジョンソン に比べれば出力、回転数ともダメダメな性能レベルなんですが・・・。 ![]() <ヨコ軸:回転数で表示> (実線は亜鉛メッキ仕様の代表データ、点線はその2の540SH基準データ) ![]() <ヨコ軸:トルクで表示> (実線は亜鉛メッキ仕様の代表データ、点線はその2の540SH基準データ) ![]() <ヨコ軸:消費電流で表示> (実線は亜鉛メッキ仕様の代表データ、点線はその2の540SH基準データ) 参考までに、5.0Vでのデータは以下のとおりです。 標準540SHは7.2Vでしか計測していないので、7.2V時のベンチマークデータとの比較です。 ![]() ![]() <ヨコ軸:回転数で表示> (実線は亜鉛メッキ仕様の代表データ、点線はその2の540SH基準データ) ![]() <ヨコ軸:トルクで表示> (実線は亜鉛メッキ仕様の代表データ、点線はその2の540SH基準データ) ![]() <ヨコ軸:消費電流で表示> (実線は亜鉛メッキ仕様の代表データ、点線はその2の540SH基準データ) <考察> 回転数、トルク、最高出力など、あらゆるデータが、9年も前に取得してあったニッケル缶仕様の540SHのデータと 見事なまでに一致しました。ここまでピッタリ一致するなんて、ちょっとデキ過ぎです。 今ほど厳密な計測管理ができていなかった時代に測定したデータが こんなに確からしいものだったなんて、我ながら驚いてしまいました。 この計測結果から導かれる答えは、ズバリ「亜鉛メッキ缶仕様の540SHは、62227ジョンソン同等ではなく、 ニッケルメッキ缶仕様の540SH同等と考えて良い」ということでしょう。 では今後、ニッケルメッキ缶の540SHはすべて亜鉛メッキ缶仕様に切り替わっていくのでしょうか? あくまで私見ですが、 どうもそうは思えません。 性能的には62227ジョンソンより明らかに良いとはいえ、あくまでも位置づけとしては62227のセカンドソース扱いだろうと 考えられるからです。62227ジョンソンがTA05などアッパーグレードのキットには同梱されていないことからも察せられるとおり、 当面は、「上級モデルはニッケルメッキ缶仕様、入門モデルは亜鉛缶仕様」という棲み分けが続きそうです。 となると、上級モデルで62200ジョンソンが入っていると「当たった!」と喜ぶのと同様に、今後は TT-01キットに亜鉛メッキ缶の540SHが入っているのを見て、「当たり!」と喜ぶ、みたいな 光景が日常的になるかも、ですね。でも逆転で使えないと使い道ないんだよなぁ〜540SHって・・・。ブツブツ・・・。 (おわり)
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