ダイナストーム2WD (復刻版) |
2001年秋に復刻キットが発売されてまだ1年半しか経っていませんが、なんだか巷では半額セールで「在庫処分」扱いになってる可愛そうなダイナストーム(笑)。 かくいう筆者は、ちょうど80年代のバギーブーム期に大学生だったせいもあり、「バギーチャンプ」以来、本格的なバギーは扱ったことがなかったのです。しかし、オリジナルが登場した1992年当時、TV収録レース「タミヤRCカーGP」でもほとんどバギーのレースがなくなり、「バギーなんて誰がやってるの!?」という状況のなかで、「なんでこんなマシン出したんだ?」と食わず嫌いのまま興味を引かれていたことも事実です。ちょうどいい機会なので、お買い得になったキットを買い込み、このクルマの魅力を検証してみました。 |
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当時、筆者はF1モデルでRCに本格復帰したばかりで、バギー関係のことはあまり詳しくなく、このマシンの誕生の経緯については断片的な知識しかありません。 当時のRC雑誌などでの紹介では、もともとこのマシン、アメリカ市場での販売を念頭において、100台あまりのプロトタイプを製作、 これをテスト販売し、フィードバックされたノウハウを盛り込んで量産モデルに落とし込んだもの、ということになっています。 ちょうど、TRF414XとTA-04 の関係と同じです。ダイナストームのプロトタイプは、「TRF211X」と呼ばれていたそうです。これについては rcfan.netさんに詳しいのでご参照ください。RCM誌92年6月号および9月号でも 取り上げられているそうですのでバックナンバーも参照するといいかも。 |
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スタイリング的には、最先端の2WDバギーそのもので、確かにワークス活動を展開する「素材」としては十分イケそうな素質はあるかなー、と
感じさせるものがありました。 しかし、後でも書くと思いますが、2WD特有のホイールスピンを抑える仕組みとして、MDC(マルチディスククラッチ)という7枚構成の多板 スリッパークラッチを盛り込んでいるあたり、「いかにもタミヤ」というか、まだまだメカニズム偏重主義から脱却しきれてない、 という側面も残るマシンでした。また、価格を考慮したのでしょうか、オリジナルのキットではモーターが付属せず、 ボールベアリングも別売でした(復刻版はいずれも標準装備でお買い得)。 シャシーにしたって、重く剛性の低いFRP板が標準で、カーボンシャシーは取説末尾にカスタマー扱いで購入する案内が記されただけという 極めてマイナーな扱いで、定番optの設定はありませんでした。カーボンシャシーの存在そのものを知らなかった人も多いのではないかと思います。 もちろん復刻版でもカーボンの設定はありません。 |
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80年代後半、既にタミヤでは、「アバンテ」用optカーボンシャシーや、カーボンパーツをテンコ盛りの「イグレス」の発売などで、純レース仕様=カーボン、の図式ができていました。また、90年代に入るとタミヤGPでのバギーレースもめっきり減り、タミヤ製バギーの活躍の場は各地のローカルレースや選手権のかかったオープンレースに向かわざるを得ない状況にあったのです。 ですから、1992年にダイナストームが発売された時、「いまさらこんな中途半端な内容じゃあオープンレースに使えないヨ」と見放されたのも無理からぬところでした。設計自体は今の水準でみてもなかなか良くできていることからすると、実に惜しいと思います。確かに、フルベアリング&カーボンシャシー標準装備にしたら、4万円くらいになってしまったのでしょうが、コストダウンと引き換えに失ったキットの評価は、セールス面ではちょっと大きすぎたのではないでしょうか。結果、全然売れないままRCショップではずーっと棚の肥やしになってましたもんね。 |
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<ボディはマジックテープ止め> まあ、そんなダイナストームですが、仔細に見てみるといろいろ新鮮な発見はあります。 ボディにしても、左右非対称で、ノーズ部分にはサーボホーンの逃げを兼ねたパワーバルジっぽい膨らみがあったり、サーボを収めるためのサイドの張り出しがあったり、アンプに冷却風を取り入れることを念頭に置いた小さなエアインテークがあったり、といった具合です。 マウント方法もタミヤキットらしからぬ手法を採っています。フロントこそキャッチピン止め方式ですが、後ろ半分はマジックテープで止める方式です。 |
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これでアンダーカウルとの密着性を高め、インナーカウルなしで十分な防塵性を得る・・・つもりなんでしょうが、どっこい、実際はステアリングワイパーのわずかな穴から容赦なくホコリが侵入してきます。4WDマシンほどではありませんが、結構、フロントタイヤがドロをかき上げるので、フラットダートを走ると内部はかなりドロドロです(悲)。防塵性にはかなり期待してたんですけど、これだったらあんまり意味ないですね。リヤもキャッチピン止めのほうが良かったです。現状ではバッテリー交換がかなり面倒ですね。確かにマジックテープのほうが軽量に仕上がるんですが・・・。 | |
<フロントセクション> では、シャシーの各部を見ていきましょう。まずはフロントセクションから。 ダイナストームのサスペンション構成は、非常にオーソドックスです。 あえて問題を指摘するとしたら、ダンパーステーの左右が分割されている点でしょうか。いまでも、多くのバギーモデルでこうしたデザインが見られるわけですが、剛性を考えたら、こんなのナンセンスでしょう。今度出たアソシRC10B4のように、最上部を結合し、閉断面にしたほうがいいに決まっています。ついでに言うと、ダンパーステーの「根元」が細くなっている点も気になります。クラッシュ時には、取り付けネジ部分からボッキリ折れてしまいそうです。まあ、剛性なんて板厚でどうにでもなる話ですし、ファッション面での判断が大きい部分ではありますが。 |
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レース用モデルらしく、バンパーは必要最小限のコンパクトな形状です。初心者の方が走らせると、フロントサスアームを思いっきり障害物にヒットして壊してしまいそうです(笑)。まあ、そんなことはメーカーが気にすることではないかな!? バンパー下部はスキッドガードの機能を持っていて、皿ビス仕上げでフラットなシャシーともども、路面との干渉を最低限に抑えるようになっています。レーシングバギーなら当たり前ですけどね。 フロントサスアームが、バンパーのスキッド角とほとんど並行に取り付けられている点に注意。初期のツーリングカーは4WDバギーの転用で作られていましたが、当時のツーリングシャシーはこんなにたくさんのスキッド角がついてました。ご参考まで。 |
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バンパー回りを上から見た図。 非常に合理的な構成でいい感じです。 |
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ダンパーは、確かダイナストームで初めて導入された(そして結局、後が続きませんでした)「スリーブドダンパー」というスペシャル品です(optでもバラ売りされました)。ハイキャップダンパーと似た形状なんですが、内部に抵抗を減らすためのテフロン製スリーブが仕込まれています。また、バギー専用ということでダイヤフラムを使わず、エアレーション方式のダンパーになっています。 実は、お恥ずかしながら、エアレーションダンパーを組んだのは今回が初めて。なんだか調整が難しいような話をさんざん読んでいたので恐る恐るだったのですが、今はエアリムーバーもありますし、一発で左右同じ反発力のダンパーを組むことができました。案外、カンタンです。「パッツン度」の調整も容易なのでエアレーションダンパーというのも案外悪くないですね。バギーはダンパーが大きいから調整がやさしいのかな? |
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ダンパーキャップエンドのクローズアップ。 ゴムブッシュを枕に敷き、ボールエンドのガタ発生を防いでいます。 ダンパーキャップはOリングでカシめられており、これがダイヤフラムの代わりにオイル漏れを防ぎます。 ちょっと注意したいのは、このOリングの劣化が結構早いこと。筆者のケースでは2年と経たないうちにヒビ割れが発生し始めました。 タミヤの純正アフターが切れていても、そもそもこれって汎用のOリング(内径10mm)ですから、 東急ハンズなどでバラ売りされている同等品を買えばオッケーです。 ダイナストームのデザインで、筆者が最も感銘を覚えたのが「前後サスアーム」です。 土の付着を考慮し、滑らかにデザインしている |
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わけですが、結果として、非常にムダがなく、高剛性な形状を実現しています。何よりも、金型屋さん泣かせと容易に察しのつく形状が
ポイント高いです(笑)。バリといいますか、パーティングラインもほとんどありません。非常に手間のかかる仕上げです。
「こんなところに湯水のようにコストをかける余裕があったんやね〜」とバギー&ミニ四駆景気で沸いた往年が偲ばれます。 デザインだけではなく、実は素材面でも要注目です。カーボン樹脂並みとまでは言いませんが、非常に軽くて高剛性なのです。 でもそれなりに粘りもある感じです。TA系ツーリングカーやマンタレイなど4WD系バギーで使われた軟質ナイロンとは違います。 ポリカ?・・・でもないような。非常に謎なこの素材、実にいい感じです。カーボン混ナイロンなんて金型痛める材料使わずにもっと利用すればいいのに。 |
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ステアリング回り。 ツーリングカーよりひと回り大きい、6mmピロボールを多用してハードなオフロード走行に対応しています。 ツーリング用に比べてコンパクトさが際立つハブキャリアも実に手堅いデザインです。 実は、80年代に設計されたアバンテ系のシャシーでは、ハブキャリア下側のピボットはもっと上に位置していて、アップライトの一部がサスアームの下に潜るくらいまで極端に車軸を下げるデザインが採られていました。 それからすると、このデザインはよっぽど保守的です。 |
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バギーの場合、サスアームの角度があまり垂れ下がらないようにするのに、タイヤを大径にするとともに、車軸はできるだけ低く取り付けたいところですが、フラットダートを走る純レース用マシンだと、コーナリング限界を上げるために車高はむしろ低くしたいので、あまりアップライト位置を下げなくてOK、ということなのでしょう。むしろどこを走るか分からない一般路面用のほうがロードクリアランスを要する、と。 アップライトのシャフトは2駆F1などのものと色が違います。シャフトに自己潤滑性と耐磨耗性を付与するモリブデンコーティングだと思います。 また、サスシャフトの両端は、オイルレスメタルのブッシュを挿入しており、砂塵による磨耗でガタが出るのを防ぐという心憎い配慮がなされています。でも、ガタなんてサスアーム交換すりゃいいんだから、コレって単なる過剰装備? |
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フロントサスを横から水平にみた図。 先述の「スキッド角」の様子が良く分かります。 バギーではギャップ走破性を高め、サスペンションの破損を防ぐ意味で大きなスキッド角をつけるわけですが、ホイールベースの変化やキャスター角など他のアライメントへの影響もありますし、ノーズダイブを助長する要素でもありますから、オンロードカーには参考になりません。オンロードカーの場合はむしろ、アンチノーズダイブ特性を付与するためにスキッド角はマイナス(逆向き)にするのが実車のセオリーです。RCカーではなかなかオフローダーのDNAが抜けきれず、キット標準でマイナスのスキッド角を設定したツーリングカーは出てきてませんね。TL-01やM-03はスキッド角ゼロですけどね(笑)。その点、よく考えられているのはF201で、重心位置に上下サスアーム延長線の交点が来るよう設定し、荷重移動しても前後の車高が変化しない理想的なアライメントを実現してますよね。 |
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純レース用マシンということで、サーボの搭載位置はドンピシャです。 サーボセーバーからステアリングワイパーのクランクまで、理想的な位置関係になっています。 クローズアップ写真は割愛しますが、左右のステアリングワイパーはボールアジャスターで連結されており、 この長さを変えることでアッカーマン比を容易に変更することができます。このあたりはTB-01などと同じです。 |
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サーボの形状に合わせて、アンダーカウルが張り出していることが分かります。 もちろん、ボディも形状を合わせています。 |
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今回使用したサーボは、サンワのRS-991というミドルクラスのアナログサーボ。 速度は0.11secと十分ですが、トルクが5kg-cmちょっとと多少細め。実売4800円くらいと格安です。 トルクが細いと言っても、レース用の4WDバギーでもなければ、どんな電動カーでも十分な性能です。今後はRCTのお薦めリストに入れようかな。意外にこのクラスのサーボって競合がありません。強いてあげればフタバS9404ですが、ちょっと実売価格高めです。フタバにはぜひ手頃なミドルクラスの新モデル出してもらいたいな。頑張れひでろ〜!(笑) サーボセーバーは、作動量を稼いでステアの作動速度をアップするため、あえて外側の穴を使用。もともとはTB系でセンターシャフトとの干渉を防ぐ意味で考え出されたアイデアですが、ちょっと違った観点から活用。 |
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バギーではオーソドックスな、センターバッテリー+左右にRCメカ、というレイアウトを採用。 | |
バッテリーは、押さえのバーを外すと簡単に交換できます。 |