<私家版モーターの法則>(てなもんじゃないですが)
法則その1:モーターのトルクは、一定時間に流れる電流量×電圧に比例し、起動時(無回転時)に最大値を得る 法則その2:電流を増やすには、電気抵抗を減らすために巻き線を太くするか、ターン数(巻線の総延長)を減らす。または、負荷を増やす 法則その3:巻き線を太くすると、ターン数は増やせない(減らさないとコアに収まりきらなくなる)逆に、巻き線を細くすると、ターン数を増やさないと回転ばかり上がってトルクが細く使い物にならなくなる場合があるので要注意。 法則その4:一般に、ターン数が少ないほどローターの電気抵抗が下がるので大電流が流れ、トルクと無負荷回転数は増える
法則その5:一般に、ターン数が少ないほどトルクは減る、と言われるが、これはあくまでも全く同一の線径で
異なるターン数のローターを作った場合の話。現実世界では、少ないターン数には太い線径を
組み合わせるため、ローターの内部抵抗が下がり、より多くの電流が流れるため、トルク、回転数とも上がるのが常識。
また、モーター出力にはマグネットの磁力も大きく関係するため、近年はターン数の多い少ないよりもマグネットの強度や
ローターに使われている線の太さ(ローターの内部抵抗)などにより一層の注意を払うべき。
法則その6:同じターン数なら、シングル(1重)、ダブル(2重)、トリプル(3重)、クワッド(4重)、クイント(5重)、ヘキサゴ(6重)の順に線は細くなり、巻き線の密度が高まる
法則その8:進角はターン数ほどには燃費や出力には影響しない 法則その9:同じローターでもマグネットの磁力が強いほうが、回転数やトルクがアップする
法則その10:磁力は距離の2乗に比例するので、同じマグネットを使っても、ローターとの間隔(エアギャップといいます)が違うとトルクや効率は変わってくる
法則その11:電流の流れが影響し、+極のブラシは−極のブラシより早く減る
法則その12:モーター性能は温度に大きく影響される 体感上はそこまでパワーダウンを感じることは少ないですが、これは走行中にバッテリー温度が上昇して放電特性がアップする効果によるものです。特に、主流になりつつあるNi-MH(ニッケル水素)セルの場合はバッテリーを暖めたほうが水素吸蔵合金の反応速度がアップするので効果が顕著です。しかし、あまり走行前にバッテリーを暖めすぎると、走行中にバッテリー温度が上昇しすぎて100度を超えたりすると、被覆が裂けたり、液漏れなどを起こします。こうなってしまったバッテリーは次回の充電以降、本来の性能を発揮できなくなってしまいます。通常は「ブロー」と見なされゴミ箱行きです。様々な意見やテスト結果をもとに現時点で言えるのは、インテレクトやGPなど内部抵抗が低くて熱吸収が多い4000以上のセルが主流となった2006年秋の時点での判断として、タミヤGPのようなスプリントレースでは40〜50度(走行時間に合わせ調整)、JMRCA系の8分レースでは30〜40度でスタートするように調整するのがベストのようです。夏は充/放電「終了時」のオーバーヒート、冬は充/放電「開始時」のオーバークールに気をつけろ、ってことです。 法則その13:無茶なスロットルワークはモーター発熱のもと (何事も多からず少なからずが肝要)
法則その14:どんなに素晴らしいモーターでも、ドライビングミスを防ぐことはできない
以上の法則をよく理解し、清く正しく美しくモーターを酷使しましょう。
法則1にも記したとおり、モーターの最大の特徴は、「起動時に最大トルクを発生する」という点にあります. これは内燃機関であるエンジンと根本的に異なる部分なので、頭では分かっていても、今一つピンと来ない場面が、ままあります。 ちなみに、内燃機関では、トルクというのは「燃料を燃やしてなんぼ」ですから、ある程度回転数が上がったところで出てきます。 例えば、普段私たちは何気なく、ストックモーターならばギヤ比を上げ、モディファイド(チューンド)モーターならば ギヤ比を下げていますが、あれは、どういう意味を持っているか、考えたことありますか?
ギヤ比によって負荷を調整しているところまでは誰でも分かっているのでしょうが、その真に意味するところ、すなわち、
負荷の調整を通じて、モーターに流れる電流量を調整している、という点はお気づきでしょうか? RCのアンプは、
電圧の調整は行っておらず、スイッチング回数の制御により電流量の調節だけ行っているので、
より多くの電流をモーターに流してパワーを上げるには、負荷を増やしてやらなければならないのです。
つまり、高出力を追求する見地からは、「ギヤ比は高めがよろしい」ということになります。
実際、レースでは、ギヤ比に迷ったら高めにセットするのがオキテです。そのほうが、後悔することが少なくなります。
負荷を上げて、巻き線に大きな電流が流れると、それに見合って巻き線が加熱し、巻き線自体の電気抵抗が増えるとともに
マグネットも熱ダレを起こし、モーターの効率が低下するので、走行中の放熱との「熱収支」を意識した
「適正負荷」が意識されるようになるわけです。ただし、ここでいう「適正負荷」とは、マブチモーターのスペック表のような「最高効率時の負荷条件」を指しているわけではありません。あくまでも「特定のサーキットで最高のタイムを得るための最適負荷」を想定していることに留意願います。
モディファイドモーターの場合、もともとがターン数が少なく、
大電流が流れる設計ですから、負荷をかけると瞬間的に数十アンペアの電流が流れることになり、ことによっては
アンプをブローすることになりかねないですし、その前に大電流の導電に伴う発熱(純粋に電気抵抗によるもの)で
さまざまな問題が生じますから、普通、そんな無茶なことはしなくなるわけです。 <ダイノデータの読み方> ところで、この「モーター研究室」のテストデータを読むには、かなり頭を使わなければなりません。 この点は、覚悟しておいてください。
現状では、一応、実車のダイナモの表示方法に合わせて、実回転数をヨコ軸とする表示方法を基本にしています。これが一番、見慣れているのではないか、という判断です。ただし、内燃機関と異なり、モーターは停止時が最大トルクのピークで、同時に消費電流も最大(ショート状態ということですから)になります。 一方、ヨコ軸が「消費電流」の場合には、そのモーターが現実の走行状態でどの程度の最大出力を出すのか、ということが一目瞭然です。 そもそもモーターの消費電流というのは、(1)バッテリー、アンプ、モーターおよびその間の配線で構成される「パワーソース系回路」の内部抵抗、(2)バッテリーの起電力、この2つの要因によって決定されますから、実は、同じモーターを使っていてもメチャクチャ幅が出てくるものなのです。 考えてみてください、かたや、内部抵抗の大きいCPRユニットに、アンプ1個分もの抵抗があるギボシコネクター使用、さらに配線は16GAの細く抵抗の大きいコードを使用、さらにバッテリーはタミヤコネクタのクルマ<シャシーA>。かたや、バッテリーはアンプと直結(JMRCAなどで一般的)、もちろんモーターも直結、コードも16GAと比べ断面積が約2倍(抵抗1/2)の13GAコードを使用し、最短距離で配線したクルマ<シャシーB>。モーターが同じでも、「回路」としてのトータルの電気抵抗が2〜3倍違ってくるのです。「電圧」というのは、回路内のすべての「抵抗」に分散してかかるものなので、回路内にムダな抵抗があるとモーターに回る電圧はその分低くなってしまいます。したがって、<シャシーA>と<シャシーB>ではモーターにかかる電圧が3〜5割違ってくる、なんてことも十分にあり得るのです。 このように、モーターにかかる電圧が違ってくると、当然、流れる最大電流も変わってくることは明らかです。また、実際の走行においては、モーターに流れる最大電流はバッテリーの起電力によっても変わります。容量が小さく、内部抵抗も大きい1300カスタムパックと、大容量・高電圧の3700HVでは、瞬間的な大電流を要求されたときに応じられる「懐の大きさ」がまるで違います。バッテリーというのは樽(たる)と一緒で、小さい樽からたくさんの水を放出するとすぐに水位が下がってしまうように、容量の小さいバッテリーは大電流を放電できません。ですから、かりにまったくパワーソース系の回路が同じ(クルマが同じ)だったとしても、バッテリーを換えるとモーターが消費できる最大値は変わることになります。つまり、パワーソース回路の構成に応じて、モーターの性能曲線は、厳密に考えると、実はその都度微妙に読み替えてやらなければならないということなのです。 理屈はそういうことなんですが、実際に、走行中の消費電流をログできるRobitronic社製「Spirit」アンプでこのあたりの実態を探ってみたところ、 Spiritのような最高級アンプを最短の距離で配線した状態であっても(ただしタミヤGPを想定してタミヤバッテリーとタミヤコネクタ使用)2400バッテリーとスポーツチューンモーターでおおよそ40Aが最大値でした。 3300だと45Aくらいになりますし、逆に1400以下だと35Aくらいが最大値になってしまいます。3600〜3800のバッテリーだと、バッテリーの内部抵抗がサンヨーRC3300HVより15%前後下がっているので、容量アップによる「懐の深さ」と相まって タミヤコネクタ仕様でも50〜55A程度を流すはずです。ちなみに、モーターを交換すると、モーターの内部抵抗やマグネットの磁界強度(=最大負荷)が変わりますからこの数値も変わります。 23Tストックを使うと、おおよそ2〜3Aくらいずつ増えるでしょうし、13ターン程度のモーターを使うと、3300HVとの組み合わせで50〜55Aくらいまでいくのではないかと思われます。ということは3600〜3800クラスのパックバッテリーで13ターンクラスだと最大電流は57〜60A程度に達する、ということです。最新の4200〜4300クラスでアンプと直結するバラセル仕様だと80A程度までの放電を想定する必要があります。 つまり、ダイノデータに示された特性グラフは、かなりの部分、「実走行ではあり得ない領域」を含んでいるのです。 ヨコ軸「消費電流」のグラフを見てください。例えば上掲グラフのジョンソンモーターの場合、これまでの説明でお分かりのように、 現実にはパックバッテリーとの組み合わせで40A以上の電流を消費することはまずありません。 ですからこの場合、40A以上(右半分)の消費電流領域は「起こり得ない現象」として切り落として読み取るべきなのです。 具体的には、最大電流が40Aしか流れないなら、40Aの値が「期待される最大トルク」となり、回転数も40Aを「0rpm」として グラフを引き直す必要があると。 ただし、パワーソースや配線方法などが変わってモーターにより多くの電流が流せる状況になれば話は変わります。 この部分はダイノデータを読みこなすうえで「キモ」になりますから、よーく覚えておいてくださいネ! このように、ダイノデータを実際の走行場面に落とし込んで考える際には、常に「パワーソースが供給できる最大電流量」を 意識する必要があるわけです。40Aまでしか流せないパワーソースで60A近辺のデータを読んでも実現されないので意味ないですし、逆に、 80A流すキャパがあるパワーソースを使いながら40A近辺のデータを基準にセットアップしてたら、 現実に80A流せば80A流れたなりのパワーが出ますから、想定外に燃費が悪化したり、パワーが出すぎて困ったりするわけです。 もうひとつ、注意したいのは、実際の走行場面では、負荷がダイナミックに変動しているため、 実感と性能表との一致がみられないことがよくある、という点です。 モーターダイノの試験データは、実走行で考えると、一定負荷となるようフルスロットルで一直線に加速している状態です。しかし実際の走行では、減速もしますし、ハーフスロットルでの走行もありますし、 コーナリングもあります(高速コーナーは、速度ほぼ一定のままでエネルギーロス<=負荷>だけが増減する場面と捉えることができます)。 また、アクセルをゆっくり開いて燃費を稼ぐ、といったこともやっています。 ですから、その都度、場面ごとの状況を「想像」して、ダイノのグラフから場面ごとのモーターの状況を読みこなしていく必要があります。 このように、あくまでもダイノのグラフは、ダイナミックな運転条件の変化を加味して利用者が読みこなしていくモノですので、 「平均15Aを消費すると、何回転でモーターを回すようにギヤ比を設定すべきか?」というような問題への明確な答えは、 グラフからは正確に読めるわけではありません。負荷が動的に変化する状況ではなく、 あくまでも一定の負荷の下で、回転数と消費電流の相関を示しているだけですから。 それでも、他のモーターとの優劣比較や、特性の把握には十分活用できますし、次ページに示すとおり、 ラップタイムや平均時速から、実際の走行で多用される「常用負荷レンジ」の想定さえできれば、 平均的な消費電力はある程度把握でき、大雑把な燃費計算も可能です。 ともあれ、定量的にモーターの状態が掴める便利さは何者にも替えられないダイノの魅力です。
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