posted on 1/27/2000
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RC Car Trend モーター研究室

<その16:ダイナラン・スーパーツーリング徹底研究>

<タミヤGPにモディファイドモーター復活!>
今年のタミヤGP全日本、特にツーリングクラスは、2400SPとTA−04&TB−01発売の影響で 一段とヒートアップの様相を呈しています。この状況については賛否両論分かれるところもあるでしょうが、 賛同できない人はタミヤGPに出なくなるだけの話ですし、この場で議論すべき話題でもないので、話は 割愛させていただきます。

とにかく、モーター分野において、2000年シーズンのタミヤGPの最大のポイントは、 最高峰の「スーパーGT1」クラスで久しぶりにモディファイドモーターが導入された、ということです。 これによって、「燃費競争」という新たなファクターがレースに盛り込まれることになりました。 また、モディファイドとはいえ、「ダイナラン・スーパーツーリングのワンメイク」ということですから、 いじれる部分は基本的に進角だけ、と極めて勝負のパラメーターが単純明快になっているのが研究室向けかな、と思い、 急遽サンプルを新規に入手し直し、ダイノテストを敢行しました。

<進角と出力の関係が分かった!>
よく、私たちが文献情報として昔から聞いているのは、 「進角を付けると、回転が上がるけれどもトルクが下がる」という「基本法則」でした。 しかし、これって本当なんでしょうか? 結論から言えば、とんでもない間違いです。本当にモーターをご存知の方なら、 このデマがRCの世界で広く流布されていることに苦々しい思いをされているのではないでしょうか。

本来、モーターの回転子(アーマチュア=平たく言うとローター)が高速に回転すると、 発生する磁束の中心線がマグネットに対してズレてきます。
これを修正するために+−の切り替えタイミングを早めてやるのが「進角」の基本的な考え方です。 すなわち、進角はある程度あったほうがモーターとしての効率は高まるのです。

これをデータで実証するのが、本章の目的です。 既に以前、Mチューン・モーターで同様の結果をみたことがありましたが、 これまでのテストでテスト条件管理やデータの読み方のノウハウも増えたため、 以前のテストより一段と質の高いデータになっていると思います。

<実験条件>
対象:
   ダイナラン・スーパーツーリングモーター 新品1基
   3.6V Ni-cd電源で5分間、無負荷にて運転しブラシを慣らした後、モータークリーナーで洗浄
テストの方法:
   進角を5度ずつ変えながら、0度から35度まで、9回を連続的に計測
   ブラシ交換・洗浄は一切なし
   (参考)ダイナランSツーリングのモーターカンには、3.3度ずつ10の目盛りが印刷されています
       今回は正確を期してレーステック社製モーター分度器を併用して進角を設定しています
       このモーターは40度まで回すとエンドベルの止め具が外れるため、37〜8度が進角の限度です

<結果>(リンクをクリックするとグラフと計測データが見られます)

最高回転数 最大トルク 最高出力 最高効率
進角0度 31,371rpm 202.5Nmm 156.4W@14,582rpm 72.8%@23,500rpm@23.4A
進角5度 32,259rpm 206.8Nmm 161.5W@14,589rpm 73.7%@23,298rpm@25.2A
進角10度 32,197rpm 207.4Nmm 162.0W@14,832rpm 73.0%@23,310rpm@25.4A
進角15度 33,669rpm 207.7Nmm 162.6W@14,835rpm 74.1%@23,995rpm@25.8A
進角20度 34,291rpm 202.8Nmm 160.9W@15,138rpm 74.5%@25,178rpm@23.8A
進角25度 35,524rpm 198.3Nmm 161.4W@15,137rpm 73.7%@26,628rpm@23.6A
進角30度 36,729rpm 194.2Nmm 158.9W@15,900rpm 73.7%@26,640rpm@25.8A
進角35度 40,003rpm 185.9Nmm 160.2W@18,306rpm 72.6%@29,585rpm@23.6A
(注1)グラフ中の実線は所与の進角での計測値、点線は基準値とした進角0時の計測値、
    ただし進角0度の点線はダイナラン・ストックの参考値
(注2)最高回転数および最大トルクは、計測データから回帰分析された推定値、最高出力および最高効率は実測値

<考察>
計測データから判断する限り、最も効率良く出力&トルクを稼げる進角は15度前後であることが判明しました。
15度手前でも、15度を過ぎても、トルクは減少しています。
実はこのモーターの化粧箱の説明にもひっそりと「15度」の進角を付けた図が載っていましたが、
あれはタミヤの推奨値だったのでしょうか?
箱絵にはそのへんが明記されてないため不明でしたが、この実験結果で明らかですね。
なお、最高回転数は最も進角の多い35度が最も高いですが、最大トルクは最も細くなりました。
とはいえ、あまり目立った減少、というほどではなく、また、
意外なことに、進角が0度〜35度と78%変化(最大45度なので)するなかで、最高効率の変動幅は3%弱と、 ほとんど影響がない結果となりました。

ただ、グラフについて、x軸を%表示した「相対グラフ」と実測値表示による「絶対グラフ」を見比べると 良く分かるのですが、進角が15度未満の場合はパワーバンドが狭く、最高出力の発生域が低速域にシフトしているのに対し、 15度を越える進角では、進角がつけばつくほどパワーバンドはフラットになり、最高出力の発生域も高速側に シフトしています。これはサーキットのレイアウトによって使い分けができそうです。

レースにおいてベストな進角は与えられた周回数や常用回転域(ストップ&ゴーの多いレイアウトなのか、 ヘアピンの少ない高速レイアウトなのか)によって異なります。ただ、基本的には進角は最も効率の良い15度付近で 使うのが良さそうです。あとはもっぱらスロットルワーク、いわゆる「ニギり方」やアンプのカレントリミッタ/ ドライブ周波数の調整(ノバック・サイクロンなどの場合)で調整すると良いでしょう。 特にカレントリミッタやドライブ周波数の調整は、立ち上がり時の余計なタイヤの空転を抑えてパワーの浪費を 防ぐのに有効です。ただしカレントリミッタについては、乱用すると逆に燃費が悪化することもあるので むやみに使うのは避けたいですが。タイトコーナーからの立ち上がりでホイールスピンが目立つ場合は試す価値はあるでしょう。

(この項終わり)

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