posted on 05/02/2002
last updated on 10/18/2006
タミヤRC製品・即買いカタログ
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RC Car Trend モーター研究室

<その28:ブラシに付いてるリード線端子の影響は?>



<ハイエンドモーターでは「ブラシ直ハンダ」が常識ですが・・・>
タミヤの新しい「丸T印」ブラシ(写真はスーパーモディファイド11T同梱のスペアブラシ) Power 「その27」で調査した「Power Maxシルバーブラシ」ですが、 このブラシ、「ハイエンドモーター専用」を誇示するかのように、モーター端子が省略されていたのは 既にレポートした通りです。また、「ハイエンドのモディファイドモーターでは、ブラシ端子の 直ハンダは当たり前」ということも書きました。別にこれは最近のことではなくて、 タミヤが1984年に初めて発売した分解式モーター「テクニパワー」以降のマブチ製「テクニ〜」 系モーターで既に採用されていたくらい、電動RCカーの初期からあった話です。

確かに、ネジ留めでは、ブラシとエンドベル(のモーターケーブル端子)との接続が、「点接触」になって しまうのに対し、ハンダ付けすれば「面接触」となりますから、電気抵抗の面で有利なことは 想像に難くありません。しかし、「本当にそんなに違うのかー?」というのが、今回のテーマです。

と言うのも、「ネジ留めかハンダか?」と言う問題は、テスターでの実測が困難なほど 微細な抵抗差でしかなく、この部分だけを取り出して計測することは一般にはなかなか難しいからです。 そこで、「モーター研」では、ダイノデータを手がかりに、この問題に取り組んでみることにしました。

方法はいたって簡単で、ダイノのモーターへの接続個所を変更するだけです。
もともと、当研究室では、交換式ブラシモーターの場合、ダイノの給電端子(ワニ口クリップ)をブラシリード線に直接挟んで通電するのを標準としています。ブラシリード線をエンドベルに直ハンダしている状態を再現したいからです。 ブラシ端子は素材も形状もさまざまで抵抗値がバラバラです。直ハンダすれば無用なので、通常はモーター性能のパラメーターから排除すべきですし、安定した給電により綺麗なデータを取りたい、という理由から、このような方式を採っています。

この標準状態に対して、今回は比較対象として、ブラシのアルミないしリン青銅製のネジ止め端子部分に ダイノのワニ口クリップを挟んで通電してみました。

なお、テストには、「その27」に引き続き、タミヤ・スーパーモディファイド11Tを使用しています。
テストは「その27」のテスト実施直後に行い、コンディション維持に配慮。 もちろん使用したブラシも同じです。

<端子の有無で差が出るか?>
スーパーストック23TタイプTから新たに採用された「丸T印」ブラシ 従来の5×4mmブラシモーターに標準装備の「旧T印」ブラシ 今回は、試験対象としてタミヤの新/旧T印ブラシを取り上げました。 (関連情報は「その18」にもあります)
ブラシリード線端子の影響を考えなければならないのは、「無改造」を徹底しているタミヤGPくらい、 オープン系レースなら、とっとと直ハンダすれば良いのでこのページでの議論はそもそも無意味、との 判断からの選択です。T印で新/旧両方をみたのは、 新しい「丸T」のほうが、出力が高い=ブラシの電気抵抗が低い分、ブラシ全体のなかで端子部分の抵抗が 相対的に大きくなり、「端子の有無による出力の落ち込み方が大きくなるのではないか」という仮説を立てていたからです。さあ、果たしてどうでしょうか?

結果の一覧表は以下のとおりです。表中のファイルネーム末尾が「od(旧)3/nw(新)3」と表記され、グラフ中のベンチマーク(点線表示)になっているのが「リード線に直接給電した場合(=ハンダ付けを想定)」のデータで、これはその27のデータと同一です。これに対して、「ブラシ端子にワニ口を挟んで給電(ネジ留めのケースを想定)」のケースはファイルネーム末尾を「od(旧)4/nw(新)4」と表記しています。データは例によって「1本」で出していますが、いくつかサンプリングしたなかで最も中間的なデータを抜き出したもので、決して計測のブレを無視した「1発」のデータではありませんので念のため。



ピークパワーに着目すると、丸T印では2.95%(182.7W→177.3W)のパワーダウン、旧T印では2.36%(165.2W→161.3W)のパワーダウン、と仮説どおりの結果が得られました。

今回のスーパーモディファイド11Tを使ったテストでは、 新/旧ブラシを比較すると、最高効率で3%前後の差、最大出力で16〜17Wの差が生じています。旧T印に対し、丸T印を使うと10%強のパワーアップになる、ということです。 「その18」で「スーパーストック23T・タイプT」を題材にご紹介した内容と似た傾向ですが、スーパーモデ11Tは軸受けがボールベアリングで回転ロスが減っている一方、ローターが発するパワーや消費電力が23Tより一段とアップしているため、ブラシ自体の接触抵抗、電気抵抗に起因する差が「効率の違い」として23T以上にシビアに出ている、と見てよさそうです。

ただし、このパワー差は、主に大電流が流れる「低〜中回転域」で生じているもので、実走行では「立ち上がりのピックアップの差」として表れる性質のものです。これが高回転域になると、ブラシの導通性能の限界を試すような大電流が流れないこと、ブラシの摩擦抵抗は新/旧ともほとんど互角である(と読み取れる)ことから、効率の差はほとんど解消されてしまい、新旧ブラシに差はみられなくなる、という点にはちょっと注意しておきましょう(一番下のグラフ=「旧T印と丸T印の直接比較」の消費電流を横軸にしたグラフ、を参照)。もっとも、立ち上がり加速が良いほうが、結局ストレートエンドでも伸びることになるので、最高速だけを追求するオーバルレースなどのような特殊なケースを除けば、普通は素直に、電気抵抗がより低い「丸T印」を使ったほうがタイムアップにつながることになります。


<今回の測定結果グラフ>
<タミヤ・旧T印ブラシの結果>


(実線は端子をハンダ付けした場合、点線は端子をネジ留め接続した場合)



(実線は端子をハンダ付けした場合、点線は端子をネジ留め接続した場合)


<タミヤ・丸T印ブラシの結果>


(実線は端子をハンダ付けした場合、点線は端子をネジ留め接続した場合)



(実線は端子をハンダ付けした場合、点線は端子をネジ留め接続した場合)


<旧T印と丸T印の直接比較(直ハンダ仕様=基準測定値)>


(実線は丸T印ブラシ、点線は旧T印ブラシ)



(実線は丸T印ブラシ、点線は旧T印ブラシ)


(10/18/2006update)
<改めて考察:テストの問題点と再試験の必要性>

・・・と、ここまでで一応の結論を見たような形になっていますが、実はこのテスト、根本的に 大きなカン違いをしていたことに、今になって気が付きました。誠に申し訳ありません!
さて、どこに問題があったか、分かりますか〜?

・・・実は、上記のテストで本当に試験された結果というのは、あくまでも「ブラシ端子の抵抗値」に 過ぎないのです。確かに、ブラシ端子はリード線よりはるかに抵抗値の高い素材で作られていますし、 断面積も小さいので、通電時のボトルネックになっていることは明らかです。 その影響を実証したのが、上記のテスト結果なわけです。しかし、この結果を鵜呑みにしてはいけないことに気が付きました。「ブラシホルダーを経由した給電」について考慮されていない計測結果だからです。

そうなんです。普段、私達がアンプからの配線をハンダ付けするのは、あくまでも「ブラシホルダーの端」であって、ブラシワイヤーそのものではありません。これってかなり重要なポイントです。だって、 「断面積」からすると、ブラシホルダーのほうがはるかにブラシワイヤーより広いでしょう?・・・ということは、いくら素材が電気抵抗の大きいニッケルメッキのスチール板だとか言っても、結果的に「回路」としての抵抗値はかなり低い、ってことなんです。つまり、場合によってはブラシワイヤーを経由するよりもブラシホルダーを経由して流れる電流のほうが多い場合だってあり得る、ってことを、本稿の執筆時点ではすっかり見落としていたんです。後日、BBSでこの点に気付いてコメントしたのですが、当ページにフィードバックするのは忘れていました。今さらですがフォローしておきます。

結局のところ、ブラシホルダーによる給電のサポートがあることを考慮すれば、実際にはハンダ付けもネジ止めも大差ない可能性が高いと思われます。ここ数年は、ブラシホルダーの仕上げが一様にニッケルメッキから金メッキにグレードアップしてきているので、なおさらです。ブラシホルダーが金メッキであれば、もはやハンダ付けと遜色ない通電抵抗になってモディファイドでもブラシワイヤーのハンダ付け必要ナシ!・・・となってしまっているのかも知れませんね。 このあたりの詳細については、機会を見て、改めてテストをやり直す必要がありますね。乞うご期待!

そもそも、何でこんなことに筆者が着目したかと言うと、4×5mmブラシ交換式モーターとアンプとの接続抵抗を究極的に引き下げるにはどうしたらいいか?・・・という観点で気になったのが「ブラシワイヤー」だったからです。せっかくアンプから12GAで引いてきても、あんなブラシワイヤーじゃ、見るからにボトルネックになりそうじゃないですか!・・・なのにダブルワイヤー仕様のブラシって、ほとんど見かけませんよね。つい最近までその理由について、真に理解していなかったわけです。でもって、「ブラシホルダーなんか経由しないで、ダイレクトにアンプとブラシを接続しちゃえば?(タミヤGPでもダメ出しされてないしー)」というアイデアをかなりマジで検討していたのですが、チョット待てヨと。果たしてそれがベストなのか?と。よくよく考えた結果、改善の余地はかなり乏しい(むしろ不利になる場合もある)ようなんで、突き詰める意欲は萎えてしまいましたが、よっぽどヒマになったり、他の場所でどうしても抵抗を削減する余地がなくなってきたら、また検討してみたいと思います・・・てなわけでオソマツ。

(おわり)

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