<その46:タミヤ・ダートチューン徹底分析> <これが「ガイアヒ」だ!> ![]() ところでこの商品名ロゴ、先入観なしに遠目で見ると、ちょっと前に話題となった 「恋のマイアヒ」のせいか、 「ガイアヒ」と読めてしまう、なんて話がモーター研BBSでありました。ナルホド!・・・と思えるかどうかは アナタ次第、なんですが果たしてどうでしょう・・・? そんな話題もありましたが、06年静岡ホビーショーでのデビューで注目を集めた最大のポイントは、 何といっても「ダストカバー」でしょう。「オフロード用(オンロードで使っても別に構わないんですけどネ)」 を ![]() 実は、電動RC用モーターの歴史からみれば、モーター側でこのような「対策」を施すのは極めて異例です。 従来から、オフロード用モーターには様々な「防塵対策」が試みられてきたことは確かなんですが、 結局のところ、これといった決定的なものは編み出されておらず、例えばアンプに取り付けるキャパシタやショッキーダイオードのように 「誰もが当たり前に施す対策」というのは、これまでありませんでした。いずれのアイデアも実効性に乏しかったためです。 モーターの使用目的にもよるんですが、およそ「サーキット」という場所を考えると、一般には、 モーターに噛み込みそうな小石はコー ![]() ![]() もちろん、だからといって、「防塵対策が全部ダメでまったく必要がない」、というような乱暴なことを主張するつもりは ありません。重要な点は、「どこを向いて話をしているか」ということです。 「レース用にはあまり重要でない、場合によってはむしろ邪魔」、とだけ言っているわけです。 では初心者の方にとってはどうでしょう?公園や ![]() 今回新たに作られたダストカバーは、2mm厚程度のメッシュの粗いネットになっていて、ちょうどRCカー用エンジンの エアフィルターと同じような形状です。これならば、モーター冷却への悪影響もほとんど出そうにありません。 細かい砂ぼこりは仕方ないと割り切り、ローターやコミュテーターに決定的なダメージを与えるような、ある程度 大粒の小石を侵入させないことだけに着目したことについては、 ![]() ・・・とはいえ、繰り返しになりますが、「防塵」というのは両刃の剣で、「入りにくい」ということは「出にくい」と いうことです。粒の大きい石はシャットアウトできますが、いったん網目から入り込んでしまった砂については、 カバーを外さないとなかなか排出されませんから、かえって走行中に内部で暴れてモーターを余計に痛める モトにもなりかねません。 だから「カバーなんて要らない」と言っているわけですが・・・。まぁコレばっかりはユーザーの使用状況に よりますから、メーカー側としては最大限の配慮をするわけで、別にタミヤが悪いとか、そういうことではありません。 あくまで、TPOをわきまえてユーザーが賢明な判断をすれば良い、という話です。 ![]() 問題は、接合面が「両面テープ」ゆえにすぐに剥がれてしまうこと。 とてもじゃないですが、このまま使用に耐えるとは思えません。すぐ剥がれて継ぎ目から大穴が開きそうです。 そこで対策として、ゴム系接着剤で接着してみたところ、簡単にイイ感じに仕上がったのでご紹介しておきます。 (右写真参照) ![]() 2)接着剤を塗布した周囲を指でつまみ、圧着する ![]() ![]() <外観上の特徴> ![]() とはいっても、進角設定(約12度)をはじめ、丸Tタイプのブラシや 廉価版モーター共通の塩ビコード、シルバーアルマイト(一応、処理はされてるっぽい)のエンドベルヒートシンクや ニッケルメッキ仕様のブラシホルダー、ブラシヒートシンクの省略、といったあたりは GTチューンと共通です。 ノイズキラーはタイプRR以降の23Tストックと共通の3素子タイプ。 GTチューンが2素子タイプであるのと比べると強化されている格好ですが、特別な理由があるとは思えません。ローター断面積が同等でターン数が増えれば、消費電流や逆起電流は通常は減るものなので、ノイズキラーの強化は単に「予告なき改良」なのでしょう。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() <計測方法> それではいよいよお待ちかねのダイノテストです。 今回は「その47」の試験と合わせてデータ取得を行いました。 温度範囲は25度±2度(公称値)で、実際には一連の計測を通じて25.0〜26.0度でした。電源(12Vカーバッテリー)など、 その他の条件はいつもと同じです。 また、計測に際してはいつものようにブラシのアタリを取った後、各個体につき5回ずつデータを取得、中央値を代表値としました。 なお、サンプル数は都合により1個のみです。従って、従来の経験則から推察すると、個体によるバラつきが最悪の場合 3%程度生じる可能性があります。 <計測結果> 〜540-J(op.689)との比較〜 ![]() <ヨコ軸:回転数で表示> (実線はダートチューン、点線は540-J(op.689)標準データ) ![]() <ヨコ軸:トルクで表示> (実線はダートチューン、点線は540-J(op.689)標準データ) ![]() <ヨコ軸:消費電流で表示> (実線はダートチューン、点線は540-J(op.689)標準データ) (おことわり) これまで、ジョンソン540モーターの基準データとしては、長らく「第2世代」の4穴タイプの値を用いてきましたが、 2004年初めにタミヤが正式に第3世代品(2穴+スチールエンドベルタイプ)をop.689「540-Jモーター」として 正規の販売ルートに乗せたことを受け、タミヤGPでも旧世代品の使用は禁止となり、 従来の第2世代品のデータを比較に使う意味がなくなってしまいました。 これを受けて、今回から、ジョンソンモーターの基準データを、 「その7」で既に公表済みの「ナラシ済み状態の第3世代品(op.689相当)の標準データ」に 移行しました。従来の第2世代ジョンソンとはデータが異なりますのでご注意願います。 04年の「540-J」の発売以降、 RCTでは、「540-J」=「第3世代品(op.689相当品)」とみなしてBBSなどでの表記に留意してきました。今後は 当研究室においても同様に取り扱います。将来、「第4世代」が出てきたら話は変わりますが・・・。 〜GTチューンとの比較〜 ![]() <ヨコ軸:回転数で表示> (実線はダートチューン、点線はGTチューン) ![]() <ヨコ軸:トルクで表示> (実線はダートチューン、点線はGTチューン) ![]() <ヨコ軸:消費電流で表示> (実線はダートチューン、点線はGTチューン) ![]() (上5本は7.2V運転での結果、下5本は5.0V運転での結果(参考値)) <考察> ![]() ローター巻き数の増加(25T → 27Tに増加=巻き線長8%増、ですが線径が細くなってれば抵抗値はもっと増えます。)などで、 内部抵抗(モーター自身の電気抵抗)は GTチューンの54.2mΩ→65.1mΩと20%アップしているのに、最大消費電流は71.5Aと、 GTチューンの82.0Aから12.8%しかダウンしていません。最大トルクに関しては、 GTチューンの274.6Nmmに対して269.5Nmmとほぼ互角です。 確かに、摩擦抵抗はGTチューンの0.310Nmm/kRrpm(1000回転毎)、540-Jの0.179Nmm/kRpmに対して 0.356Nmm/kRpm(GTチューン比で+14.8%、540-J比で2倍)もありますから、かなり多いです。 これでは、回転数を上げて使うと、コミュからものすごい摩擦熱が出てしまいます。 単純な話、同じ回転数なら540-Jの 2倍の摩擦熱がコミュから発生するわけですから。電力消費に伴う発熱とは別で、単なる「摩擦熱」で、ですよ! この摩擦のせいで、回転数は伸び悩んでいます。「回転数」で540-Jと比較したグラフを見ればよく分かりますよね。 いずれも、「シングル27ターン」とローターの表面的なスペックは同じなんですが、 最大出力では、111.5Wを発揮したダートチューンのほうが、86.9Wしか出ていない540-Jよりも28%も多いわけです。 ただ、無負荷回転数は540-Jに対して3.6%ほど劣っています。もっとも、実際の走行では、文字通りの「無負荷」で 回るコトなんてあり得ないし、ブラシが減ってバネテンションが下がれば、回転数なんていくらでも伸びていきそうなので、 ある意味「どうでもいい値」ではあるんですが・・・。 出力レベルについてはダートチューンの圧倒的なパフォーマンスが目立ちます。111.5Wといえば、 23ターンの「スポーツチューン」(95W級)よりも17%もパワフルなわけですから! 「スポチュン代替」と考えていると、トンでもない速さにビックリすることになります(ギヤ比が適切なら)。 巻き数を4ターン増やしても、20年前、いや「ブラックモーター」から考えるとマグネット等は25年も前のモノである スポチュンよりはるかにパワフルなモーターになっちゃってる、という事実を見てしまうと、 この25年間のブラシやマグネットの素材技術の進化には驚くばかりです。 120W級のGTチューンと比べても、7%低いだけですから、バッテリー選択やアンプの配線、ギヤ比設定と いった程度のチューニングで、ヘタするとGTチューン搭載車を食っちゃうことも十分にあり得るポテンシャルを 秘めているわけです。 グラフを見る限りでは、モーターの基本的なキャラクターは、まさに「GTチューン」の弟分、という感じでほとんど同じです。 ローターのターン数が増え、ローターの電気抵抗が増えた分、素直に性能ダウンしている感じです。 従って、「使いこなし」のノウハウも基本的にはGTチューンと同じ。 「ギヤをメいっぱい上げて(ギヤ比を小さく)ゆっくり回すこと」に尽きます。 GTチューンより出力が細い分、「最高のパフォーマンスを得るためのギヤ比」はGTチューンよりもさらに高くなります。 1500g、3700HV搭載のツーリングカーを前提としたRCT推奨ギヤ比は、 ナロータイヤ仕様で4.8±0.5、ミディアムナロータイヤで4.3±0.5(!)です (車重が100g重かったり、バッテリーのグレードが低かったら0.3〜0.5増やしてください)。 「そんなギヤ比ありえねーよ!」という声が出ても当然でしょう。 でも、「モーターなり」に考えると、そういう結論になってしまいます。 あまりに非現実的な設定なので、通常は「かなりモーターを遊ばせた状態」で使用することになりそうです。 それがタミヤの狙いでもあるんでしょうけど・・・。 ![]() だから「オフロード用」なんです、と言えばそうかも知れないんですが、カバーが付いてるから、とかいった 短絡的な理由ではなくて、「シャシー側のギヤ比の制約」との絡みで、 特に入門用バギーに組み合わせたときにベストパフォーマンスを 得やすい設定になっているわけです。 ところで、消費電流を軸に取った3枚目のグラフを見ると、ターン数が増えた分、ダートチューンのほうが大電流が流れにくく なっており、効率面ではGTチューンより不利であることが分かります。 また、この結果、22〜23A以上の負荷領域でGTチューンとの出力差が大きく出る形となっています。 つまり、負荷のかかる領域ではGTチューンとのパワー差がハッキリ出る一方、 負荷の軽い領域では意外にGTチューンとの差は出にくい、ということが予想されます。 タミヤGPは一般に低め(大きめ)のギヤ比が指定されるので、そういう場面では、従来GTチューンを使っていたような カテゴリーでダートチューンを指定されても、ラップタイム的にはほとんど変わらないことになるでしょう。 ただ、バギーのジャンプやゼロ発進、ヘアピンからの立ち上がりといった、大きな負荷がかかる場面では、 パワー不足を感じるかも知れません。従来のGTチューンだって、ジャンプ加速はモノ足りませんでしたからね。 そのGTチューンよりも絶対的な出力はどうしても少し落ちるわけですし。もちろん、スポチュンや540ではもっともっとダルダルな走りになってしまうので、それらに比べればよっぽどパワフル、なんですが。 一方、オンロードレースで、スポチュンの代わりにダートチューンが指定された場合はどうでしょう?こちらのほうが影響が大きそうです。 立ち上がり区間の加速が大きく変わるでしょうし、 それに伴って「タイヤの使い方」が一段と重要になりそうです。だって今までと同じようにスロットル操作すると、 ホイールスピンが増えますから。そうすると タイヤは従来より走行中の加熱が酷くなる方向です。タイヤウォーマーがないと走行中の温度変化に 今まで以上に影響を受けることになりますし、 タイヤ動作温度の想定値も従来より少し高い水準に移ってしまいます。そうすると路面やコースレイアウトによっては コンパウンド選択にも影響するかも知れません。単純にタイヤ温度が上がるというのは、走行パフォーマンス的には有利になるので、 悪い話ばかりではありませんが…。 「バッテリー」もダートチューン搭載車の走りを決める大きなファクターになりそうです。 というのも、ピークパワーが「33.6A」という比較的大きな消費電流域で発生しているからです。 ちなみにGTチューンは34.6A、540-Jは27.2Aでピークパワーを出しています。タミヤの純正バッテリーで 35〜40A級の電流をある程度コンスタントに放電できるのは3700HV(2013年現在でいうと、)くらいしかありません。 2400ザップドだと、30Aはいいんですが、35A以上になってくるとかなりキツいです。 例えば1700とかのパックでこのような大電流を消費しながら走ろうとすると、 モーターが要求する電流にバッテリーが応え切れず、 RCメカの瞬間ノーコンや走行時間の著しい短縮、バッテリーの異常な過熱、といった症状が出ます。 もちろん走りの面でも、加速が悪いなどの現象が出て、ショボいものになってしまいます。 「ダートチューン」の本来のパフォーマンスを引き出すには、できるだけ高性能なバッテリーが欲しいですし、 できる限り大型のキャパシタを使用して バッテリーの負荷を緩和することも必要でしょう。 「ダートチューン」をオフロードシャシーに載せて使う場合と、オンロードシャシーで 使う場合とでは、「シャシー側のギヤ比設定範囲の都合」によって、 思いのほか運転条件の違いが出てきそうで、それがこのモーターの評価を2分する原因にもなりそうです。 せめて当ページをご覧いただいた方には、このモーターの特性を良く理解していただいて、有意義かつ有効に そのパフォーマンスを引き出していただけたらなぁ、と願います。 (おわり)
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