posted on 5/11/2007
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RC Car Trend モーター研究室

<その47:スーパーストックBZ・徹底チェック>



<タミヤ最新23Tの真価は?>

タミヤの最新23Tストックとして2006年7月に発売された「スーパーストックBZ」モーター(Item 53930、本体価格3200円)。 データの取りまとめが大変遅れていましたが、07年シーズンからJMACA規定が改正され、新しい23Tストック (スタンドアップブラシ仕様のみ進角自由化)が ゾロゾロ出てきそうなので、いい加減にコメント付けて公開しないとアカン、ということで 急いで取りまとめた次第です。

さてこのタイプBZ、姉妹モデルとして1ヶ月前の06年6月に発売されていた 「ダートチューン」ともども「バギー用」という触れ込みで発売されました。「Buggy用でTZの発展型」だから「BZ」 なのでしょう。 オフロード対策として 防塵カバーが付いているのが 特徴です。外観上の特徴はそれだけ。ブラシスプリングは従来のタミヤの スタンドアップブラシ系23Tストックに多用されてきた180gクラスの線径0.49mmタイプ(Item:7405079)で特に 変わったところはないですし、モーター缶も塗装の色こそグレー系に変更されましたが素材は 従来のタイプTZ/RZとの差異は見受けられません。カンのデザイン、板厚(1.3t)も従来どおり。 エンドベルのデザインも同じ、進角も20度です。・・・とはいっても、 他社の23Tストックがオープンレースで鍛えられてどんどん進化しているだけに、 いくら「事実上タミグラ専門」のタミヤ製23Tストックとはいってもそれなりにアップデートはしっかり施されています。

今回の強化ポイントは、どうやら「マグネット」にあるようです
ヨコモ「テスラメーター」によるタイプTZ/RZのマグネット計測結果は「その40」 で既報のとおり、タイプTZ、RZともに 「最奥部で165〜170カウント、マグネット中心部で150カウント、エンドベル側で120〜125カウント」という結果でした。 これに対し、今回、タイプBZのカンを測ったところ、最奥部で「187」というビックリするような値を計測。 エンドベル側でも「159」でしたので、計測ミスなんかではありません。従来の マグネットから平均でおよそ25カウント、実に約15〜17%もの磁力アップを果たしていることになります。 さてコレが出力特性にどのように影響するのでしょうか? 一般論としては、トルクアップする代わりに 回転数は落ちそうなんですが・・・。ローターとの兼ね合いもありますから、一概には言えませんが。 ブラシ、ブラシバネは従来と同じなので性能に影響しないはずですので念のため。


<計測方法>

今回は「その46」の試験と合わせてデータ取得を行いました。 温度範囲は25度±2度(公称値)で、実際には一連の計測を通じて25.0〜26.0度でした。 モーター温度やダイノ駆動用のFETの温度変化で測定結果がブレないよう、室温+5度程度に収まるよう 適切な冷却インターバルを置いて計測するのもお約束。 電源(12Vカーバッテリー)など、 その他の条件もいつもと同じですが、「その45」から導入した 「5Vでの計測結果」も参考情報として併せて公表しておきます。

計測に際してはいつものようにブラシのアタリを取った後、各個体につき5回ずつデータを取得、 出力(W)のメジアン(中央値)に最も近いデータを代表値としました。なお、サンプル数は都合により1個のみです。 従って、従来の経験則から推察すると、個体によるバラつきが最悪の場合 3%程度生じる可能性があります。



<計測結果>

(表1:タイプBZの生データ<出力の大きい順>)


以下、同じスタンドアップブラシ仕様のタイプTZと比較します。ブラシ、ブラシバネはいずれも共通です。


<ヨコ軸:回転数で表示>
(実線はタイプBZ、点線はタイプTZ)



<ヨコ軸:トルクで表示>
(実線はタイプBZ、点線はタイプTZ)



<ヨコ軸:消費電流で表示>
(実線はタイプBZ、点線はタイプTZ)


参考までに、旧モデル最強だったタイプRZ(レイダウンブラシ仕様)と比べると、こうなります。


<ヨコ軸:回転数で表示>
(実線はタイプBZ、点線はタイプRZ)


5V計測データはこんな感じです。


<ヨコ軸:回転数で表示>
(実線はタイプBZ@5.0V、点線はタイプBZ@7.2V)



<考察>
タイプBZのピークパワーは142.9Wと旧モデルのタイプTZ(134.5W)を6.2%も上回り、無負荷回転数(推計値)も 24,462rpm→26,381rpmへと向上しています。これは、タイプRZの142.8W、26,280rpmと比べてもほぼ互角の値です。 平たく言うと、タイプBZは「タイプRZのスタンドアップ版同等品」と考えていいでしょう。これは「狙って作られた」というよりは 「たまたまそうなった」という感じなのではないかと思われます。ブラシ構成もブラシバネ圧もマグネットもローターも、 全然、別物ですからね。総合的な組み合わせの「結果」として、見事にウリ2つのデータが出ました、というだけのことで。

タイプBZはエンドベルストッパーがアルミ製のままですから、タイプ
RZのスチール製ストッパーに交換して3W程度のパワーを 上積みすれば、「最強」になりそうです。タミヤGPやJMRCAスポーツクラスではこうした改造はNGですけどね。

ところで今回は、グラフを描いて「正解」を見たとき、正直、「えー、なんで〜??」と非常にビックリしました。 だって、ブラシもブラシスプリングも同じなんですよ! なのに、マグネットが強化されてても最大トルクはほぼ同じ。 むしろタイプTZのほうが若干太いくらいです。トルクが太くなりがちなレイダウンブラシ仕様のタイプRZと比べると、 この傾向はさらに明確です。タイプBZが一番トルク細いじゃん、って。 まぁ〜、実際は非常に僅差ですから、「細い太い」とガタガタ言う次元ではありませんが、気持ちとしては。

最高出力が出ているポイントとその際の消費電流は大きく違っています。タイプTZの最高出力時の 消費電流は38.8Aでこの時のトルクは109.3Nmm、タイプBZは41.6Aを消費して112.3Nmmを発揮しています。

回転数で示した1枚目のグラフを見て少々焦ってしまいましたが、実は、 2枚目(トルク)、3枚目(消費電流)をヨコ軸にしたグラフを冷静 にみれば、「マグネット強化」の影響がよく出ています。 つまり、タイプTZに比べて出力ピークの出るポイントが「下の回転数」にシフトしているのです。そして、効率カーブも 下方にシフトしています。同じスタンドアップブラシ仕様なのに、軽い負荷で回すとタイプTZより効率が悪くなる のです。 これは、カン側の永久磁石の磁力アップによって、回転するローターうち無通電の1極が発生する誘導電流が大きくなるからでしょう。 誘導電流は「外部磁界」の大きさに左右されますからね。マグネットが弱いほうが誘導電流が小さいので、タイプTZのほうが 高回転時の損失が小さいわけです。

それにしても、マグネットの磁力アップが素直に最大トルクのアップに結びつかないのはナゼ?・・・と思うのですが、 これは、現時点では正直言ってよく分かりません。GTチューンのときと同じです。せいぜい思い付くのは「エアギャップ設定の違い」 くらいなんですが、エアギャップなら回転数の全域で影響するはずで、最大トルクだけが変わらない理由にはならないですし、 高回転域でBZの効率が悪化する理由の説明も付かないので、どうも当たってないと思うのです。 また実際にエアギャップが測定できれば話は早いんですが、これがまた実にビミョ〜な話で、 「見た目」だけで分かるような違いはないんですよね。かと言って測定するのも困難ですし・・・。 マグネットの内径を正確に測れる道具がなく、結構面倒で・・・ (通常のノギス等では測定したい場所にに届かないのです)。まだまだ「修行」が足りませんねぇ。悪しからず。

ローターについては、「23T」というマーキングで、コア形状などからしてもタイプTZと共通のようです。 ローター仕様が違うなら、まだ話は簡単なんですが、どうもそうではないようですしね・・・。謎です。

余談ですが、今回は「ローターが怪しい」とか考えてさんざん悩んだので、 今回は「元祖23T」スポチュンとのローター比較もしてみました。 製造元が違うので寸法規格が異なるのは当然なんですが、改めて比べてみると、面白いですね。 ローター外径はいずれも23.0mmですが、 実はスポチュンのほうがコアの積層が多くてローター長が1.0mmほど長くなっています(コア全長21.9mm)。 このせいで、磁力の弱いマグネットにもかかわらず それなりのトルクを発揮するとともに、巻き線が長くなる分、23ターンとしては内部抵抗が比較的大きく、 消費電流とピークパワーが抑えられた特性に なっているのでしょう。ローター長が長いのでサガミ系のモーター缶には納まらず、モディファイド缶と組み合わせての 再利用が難しいのが残念ですが、たまには使い古しのモーターを分解してこういった比較をやってみるのも楽しいですね。

(おわり)



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