<その25:タミヤ・スーパーモディファイド11Tの実力やいかに?>
<8年ぶりに登場したタミヤ最強モデル!> 2001年10月24日、ついに発売された「タミヤ・スーパーモディファイド11T」。同28日開催のタミヤGP東京大会では さっそくスーパーGT1クラスでの使用が認められ、ほとんどの選手が使用していました。 RCTでも、「アクトパワーTRFチューン」以来最大級の出力を誇る(はず)のこのモーターをさっそく購入。ただちにテスト・・・したかったのですが、アテにしていたダイノの修理がいっこうに終わらず、結局2002年の春以降にようやくデータ取りが実現したのでした。遅くなってどうもごめんなさい。既に、「その27〜28」のほうが先行して公開されていますが、そもそもはこちらが「エピソード1」に相当するページになります。まずはこのページから読み始めると、スーパーモデ11Tの全貌が掴めることでしょう。 考えてみると、タミヤのモディファイドモーターもずいぶんな歴史を積み重ねてきています。 ちょうど良い機会なので、このたび「タミヤ・モディファイドモーター列伝」として別途取りまとめてみました。例によってかなり情報テンコ盛りの読みごたえある内容に なっています。興味があったら併読してください。 <外観調査> さて、今回も例によって外観調査から。 と言っても、このモーターはこれまでのサガミ系タミヤモーターの集大成ともいう感じで、特に新しい要素は見当たりません。進角変更ができるモディファイドなので、ローターにはストックモーターに見られるホールショット加工(磁力線を曲げて擬似的に進角を変える小細工)といったものは見当たりません。当然か。軸受けもお約束のボールベアリング。エンドベル回りはスーパーストック系と共通で、固定方法がカシメではなく、ネジ止め式になっただけの違い。エンドベルのアルミ放熱板が精悍なブラック仕上げになったのは個人的にはウレしいです(笑)。基板式のノイズキラーコンデンサは素子数が3個となり、回転数と消費電流のアップに対応しています。 なお、ブラシなんですが、妙なことに、このモーターには、パワーの出ない「旧T印」のレーシングモーターブラシ(op.307)が標準装備されています。そのうえで、最新の、一段とパワーが出る「丸T印」のブラシが「交換用」として袋に入って同梱されています。 実は、02年5月現在の時点で、この「丸T印」ブラシは まだ正式なスペアパーツとして扱われていない というシロモノです。この02年6月には、「スーパーストック・タイプS」が発売されますが、このモーター、 「タイプRのマグネットにタイプTのエンドベル」という組み合わせなんだそうで、これはまさに「その18」で みた結果から察する限り、最強の組み合わせ。したがって2002年シーズンのタミヤGPでは間違いなく猛威を振うと思われるのですが、 肝心のスタンドアップタイプのスペアブラシが「旧タイプ」しか売ってない、ということで妙な「ねじれ現象」に陥っています。 この2002年シーズンに新品の「丸T印」ブラシを用意するためには、タイプSないしタイプTの新品を丸ごと買うハメになる ケースが一般的だろうと思われますので、くれぐれも安易にモーター付属のブラシを使ってしまわないよう、注意が必要です。 (11/7/2006update) その後、2002年暮れにop.581としてようやく定番パーツ化されましたが、2003年秋頃までは量販店を中心に品薄状態が続いていましたね <それではいざテスト!> では、今回はウンチクもそこそこに早速テストです。 比較の対象としては、本来なら「ダイナテック02H」など過去のハイエンド・モディファイドを使うべきなんでしょうが、ちょうど手元に適当なデータもテストに使える新品モーターもないので、今回はGT1クラスで使用される同じスタンドアップブラシ仕様の「スーパーストック・タイプT」を引き合いに、「最新23Tとのパワー差」「GT1とスーパーGT1のパワー差」という観点から比較してみました。ただし、2002年シーズンのタミヤGPではスーパーGT1でも23Tストックを使うレースが多いようで、スーパーモデ11Tの活躍の場は非常に限られているのが実状です。残念。 ブラシについては、「その18」でスーパーストック・タイプTで確認された新・旧Tブラシの性能差を再度検証する意味で、両方のデータを取ってみました。 使用するブラシは、念のため新品時に1回ダイノを回してデータを取ってから、 アタリを取るために3.6V電源で5分間の無負荷通電ブレークインを行い、その後、 常温まで十分モーターを冷ましてからナラシ後データを取得する、という手順で実施しました。 なお、進角は箱絵のメーカー推奨値に従い「目盛り4コマ(12.5度)」に設定してあります。 <テスト結果> (実線はスーパーモディファイド11T丸T印(新型ブラシ)、点線は 同モーターの旧T印ブラシでのデータ) (実線はスーパーモディファイド11T丸T印(新型ブラシ)、点線は 同モーターの旧T印ブラシでのデータ) (実線はスーパーモディファイド11T丸T印(新型ブラシ)、点線は 同モーターの旧T印ブラシでのデータ) まず最初は、付属の2種類のブラシについての検証です。 今回はあえて、先行公開した「その27」で採用したデータとは別に、同条件ながら測定日がほぼ1ヶ月前の「もともと用意してあった基準計測値」を使ってスーパーモデ11Tを評価してみました。「その27」のデータと突き合わせて検討いただくと、新旧Tブラシの性能差がより一層浮き彫りになると思います。 今回、ご紹介するデータセットでは、新旧ブラシの最大出力の差は、実に19.8%もの開きになっています。「ダイノが戻ってきた〜」と ウキウキしながらいきなり測定して、この格差に愕然とした筆者の姿が目に浮かぶでしょう?<笑> 「いくらなんでも、これじゃあ違いすぎる」ということで、Power Maxシルバーブラシのテストの際に合わせて再計測したのが 「その27」のデータなわけですが、それでも10%を超える最大出力の差が認められました。後日、対象モーターを アクトパワー2WDに換えて計測した(ただしこちらの比較対象ブラシはop.123)「その45」では 7.4%しか差が出ていませんが、当ページを執筆した2002年時点では、「その45」を執筆した2006年時点ほどには 計測時の温度管理が厳密に行われていませんでしたので、計測データの信頼性に問題があるのかも知れません。 op.123ブラシよりもop.307ブラシのほうが性能アップしているしていることは間違いないので、 その分を差し引いて考えると、op.307からop.581へのブラシ変更による性能アップの寄与度は「5〜7%程度」と みるのが妥当なところかなぁと考えます。 2回の計測で予想外に差が出た理由ですが、これは「効率」の欄を見れば明らかです。要するに、今回公表した第1回の計測では、まだ完全にはブラシのアタリが出ていなかった、ということなのでしょう。したがって、ブラシが相対的に硬い「旧T」のデータが低めに出てしまった、と。これに比べて、ブラシが柔らかい「丸T」は当初からデータが安定していました。ナラシ前の「1発目」のデータのほうが今回公表の「5分間ナラシ後」のデータより最高出力がやや高かったくらい、最初から最高性能を発揮している格好で、1ヵ月後に測定した「その27」のデータでも今回計測値と比べて7%アップ(変動)にとどまっています(それでも、測定日が変わっただけで発生した測定値のブレとしては異様に大きいですが)。これに対し、「旧T」は同じ比較で16%ものパワーアップをしていますが、その理由のほとんどは効率の改善によるもので、それはブラシのアタリが出たということ以外に説明がつきません。これはパワーアップしてもEMF値がほとんど変わらず、回転数が増えた分相応にフリクションロスが増えていることなどからみても明らかです。 (実線はスーパーモディファイド11T(丸Tブラシ)、点線は タミヤ・スーパーストック・タイプT基準データ(その18参照)) (実線はスーパーモディファイド11T(丸Tブラシ)、点線は タミヤ・スーパーストック・タイプT基準データ(その18参照)) (実線はスーパーモディファイド11T(丸Tブラシ)、点線は タミヤ・スーパーストック・タイプT基準データ(その18参照)) 次に、基本的に同じデザインのカンを使っているスーパーストック23Tと比べてみます。今回は、測定したのが02年4月でしたので、スタンドアップブラシの「タイプT」を選択していました。いま、「同じデザインのカン」と言いましたが、実はスーパーストック23Tでも、タイプTとタイプRではマグネットの磁力が違う、という話があります。「その18」でもこの2タイプについて、起動トルクの面では確かにRのほうが磁力が強そうなデータが出ていたのですが、この時はEMF値にはほとんど差異が認められませんでした。タミヤから裏付けを取ったわけでもないので、「良く分かりません」というよりありませんでした。ブラシスプリングは明確に違っていたので、ブラシテンションのせいかなあ、と判断していました。 このグラフを見てビックリしたのは、スーパーモデ11Tの意外なまでのトルクの細さです。 一般的には、ターン数を減らしても、線径を太くするので消費電流が大きくなり、 結果的にトルクはあまり減らないのが通例ですが、スーパーモデ11Tは絶対的な起動トルクこそ、タイプTより大幅に大きいものの、同じ消費電流、特に中〜低回転域ではトルクが細く、効率の良さで回転を稼ぎ、出力を確保していることが一連のグラフからよく分かります。スーパーモデ11Tのようなハイパフォーマンスモーターでは、「下」のトルクはもともと有り余って立ち上がりでコントロールが難しくなるくらいなので、あえてトルクは細くして回転を稼ぎ、ドライバビリティというか、スロットルのリニアリティを確保しようと考えているのでしょう。確かにこのほうが、スロットルワークが多少ラフでも、スムーズな走りが得られるので扱いやすくなることは間違いありません。このあたり、ダイナラン・スーパーツーリングと発想は同じです。ただ、スーパーモデ11Tの場合は、ローター側でなく、マグネット側でトルクの調整を行っているようですが・・・。 トルクは細いスパーモデ11Tですが、新「丸Tブラシ」を使っていれば効率は悪くありません。ちょうど、同じ丸Tブラシを使うタイプTのトルクと回転数が伸びた、という感覚で使うことができます。「下」の領域での効率の高さや、20A以下の消費電流域での特性が酷似している点からすると、タイプTと同じギヤ比でスーパーモデ11Tが使えるのではないか、と思われます。ただし、ゼロ発進でニギり過ぎないことと、23Tだとほとんど全開のまま周回するような広いコースでの使用が前提ですが。アクセル全開率の低い通常のコースでもあまり23Tから大きくギヤ比を落として使う必要はなさそうです。04ピニオンで2、3枚落しという感じでいいんじゃないでしょうか。 ところで、トルクのあまりの細さが気になったので、過去の他のモーターとの出力を比較してみました。 例えば、「その16」で紹介したダイナラン・スーパーツーリングを例に取ると、あのモーターは、旧Tブラシでありながら、メーカー指定に近い進角(15度)で「162.6W」という最高出力をたたき出していました。これに対して、同じく「旧Tブラシ」を装着したスーパーモデ11Tは、上掲のグラフにもあるように、わずか「142.4W」しか出ていません。おいおい。いくらスーパーツーリングがショートスタックのローターだからと言っても、相手は13Tです。ショートスタックは巻き線が短い分、モーターの消費電流を左右する「ローターの電気抵抗」が低くなっており、13Tだと実質的には通常のローターの11T相当程度の電気が流れるようなのですが、それにしてもスーパーモデ11Tのマグネットは弱いなあ、と思います。ま、強けりゃいいってもんでもないですが。てっきり「タミヤ最強モーター」と思い込んでいましたが、どうやらTRFチューンとか、10ターン仕様のダイナテック02Hのほうがまだまだパワーの面では上なのかも知れません。もう古いから、ということでこのへんのモーターはダイノテストしていなかったのですが、「過去を知る」という意味で折を見てテストしてみる価値があるかも知れません。 <おわりに> 同じモーターでも、ブラシが変わるとこんなに出力が違うもんなんですね。 また、スーパーモデ11Tがこんなにトルクが細いモーターだなんて、回してみるまで考えもしませんでした。 消費電流が大きい分、当然、23Tよりもトルクは大きいと信じていたのです。 何事も「事実」を知ることが大事だなあ、と改めて感じました。 ただ、トルクが細いこと、即、「スーパーモデ11Tってダメ」という評価にはならないと思います。 ハイパワーになればなるほど、コーナー立ち上がりでのスムーズさが大事になるので、 「トルクが細い=コーナーでクルマが失速しにくい」という点が大きな武器になる可能性があります。 また、トップエンドの特性が23Tそっくりなので、23Tからのステップアップには好適そうです。もともと、そのへんが狙いでしょうから、そういう意味では狙いどおりに仕上がっているモーターといえます。 スーパーモデ11Tは、あくまでも「オンロード用のハイエンドモーター」という位置付けでしょうから、過去のバギー用モデル、 アクトパワーTRFチューンやダイナテック02Hとは一線を画し、特徴を生かした上手な使い方を考えていきたいものです。 (おわり) |