<その26:復刻版ダイナストームに付属のモーターって何?>
<ダイナストーム復刻!> タミヤが1992年にリリースした2WDバギーの最高峰がダイナストーム。後に「TRF414X」でも採用された 「100台あまりの量産試作車をワークス供給して各国で先行テストを重ねる」という手法を初めて採用したことでも話題を呼んだスーパーマシンです。残念ながら、既に時代は「セナ・プロ・マンセル」のF1ブーム絶頂期。ツーリングカーもブレイクの兆しを見せ始めた時期で(当時は今のようなブームになるとは思いもしませんでしたが)、新しくバギーを始める人はめっきり減り、あまり台数は売れなかったようで、いつかは買いたいなあ〜と思っている間に 気付いたら絶版になってた、というのが一般的な印象ではないでしょうか。絶版になっても店頭在庫は 結構長期間残ってましたね。今でも田舎のお店を探せばあるでしょう。(ただし オリジナルはベアリングなし、モーターなしという仕様なので、フルベア、モーター付きの復刻版のほうが おトクです!念のため) そのダイナストームが、TRFに前住サトシ選手が加わった影響もあってか、 復刻再販 されたのは2001年10月末。 (RCTのキット紹介ページはこちら) オリジナルの発売当時から、伝統的なタミヤキットのご多分に漏れず、「メカの凝りすぎ」で 駆動系(スリッパークラッチ)が重過ぎ、JMRCAなどオープンレースでの活躍はイマイチでした。 ただ、正美選手とのコンビで最強の座を欲しいままにしてきたアソシのクルマを見ていても、 バギーの基本形は80年代後半には既に完成されていたことが分かります。 現在の最新マシンと10年前のクルマを比べても、違いを見分けられるのはひと握りのエンスーに過ぎない ことでしょう。たしかに、最新鋭のRC10B3(アソシですヨ)では、 メインシャシーはより軽く、より低重心に、走破性に対してもより細かい配慮が なされましたし、サス回りもロングスパン化やアライメントの見直しが一段と進み、ダイナストームより 基本性能が優れていることは否定しようがありません。 けれども、ダイナストームがそんなに設計が古いか?といえば、あながちそうでもありません。 ロングサスの採用やアライメントの最適化、スリッパークラッチの採用など、 現代2WDバギーの基本要素はダイナストームにも既に盛り込まれていて、あとはシャシーの素材をFRPから カーボンに換装するくらいの変更ができれば、現在でも十分に通用する内容といえます。 何よりも、組み立てやすさで定評あるタミヤキットで、ハイエンドの2WDレーシングバギーが手に入るという 選択肢が確保されていることは、RCファンの1人としてはありがたいことです。 タミヤのシャシーらしくない(笑)、「見るからにいかにも走りそうなカッコ良さ」が ダイナストームのシャシーにはあります。もちろんボディーも。その魅力は、デビューから10年経った今でも全然色褪せていません。 <同梱モーターに注目!> さて、キットの紹介が長くなりましたが、今回のテーマは、この「復刻版」に新たに同梱された謎のモーターについてです。なかなか入手しあぐねてテストできなかったのですが、今回、 「超初心者のためのラジコン入門講座」でおなじみの都築由浩さんのご提供により、計測が実現しました。感謝!! 実は、この付属モーター、パッと写真で見たときには、「なんだ、アクトパワーの残り物を付けたのか」と思っていたのです。限定販売品、しかも今やマイナーなバギーモデルのために、わざわざ新しい缶を作るほどのことはしないだろうと思っていましたんでね。しかし、今回、実物を改めて見てすぐ気付きました。 これ、アクトパワー系じゃなくってスーパーストック系だ、って。 ターン数は14Tダブル、とのことで、線径0.75mmのアクトパワー2WD(ピンク缶)と同一。メーカーが同じ 相模マイクロですし、ローターコアも含めて恐らくアクトパワーと共通(流用)でしょう。 ローターの外観上、スーパーストック23Tにみられる、磁力線を曲げて擬似進角をつけることを狙った 「ローターコアに開けた2本の通し穴」(ホールショット加工といいます)も見当たりませんし。 ただ、今回の付属モーターはいわゆる「ストック仕様」であり、分解できないので、今回はローターについて 詳細に確認することは不可能でした。(タミヤの製品案内には「分解可能」とありますが、カンはカシメてありましたし、進角設定用の目盛りの打刻もありませんでした。カシメが目立たず、外観がモディファイドと紛らわしいので担当者がカン違いしたのかな? もっとも、ブラシ交換とコミュ研磨はできますから、「分解整備とはそういう意味だー」と居直られたら「はあ、そうですかあ〜」と引き下がるしかありませんがね<爆>) 進角については、てっきりスーパーストック23Tシリーズと 同じ20度だと思い込んでいたら、あらあら、 写真のとおり、「12.5度」になっています (写真のモーターゲージの大目盛りは5度、小目盛りは2.5度です)。 12〜15度、といえば、標準的な7.5mm前後の径を持つコミュ(いわゆるスモールコミュ)で5×4mmの スタンドアップブラシを使うモーターであれば、 理論上の効率がベストとなる進角ですから、 これはこれで賢明な選択でしょう。競合するモーターも特に存在せず、 「孤高のハイエンドストックモーター」なわけですからね。 効率重視でいいんじゃないでしょうか。 このほかのチェックポイントとしては、 ・ブラシはスタンドアップタイプで最新型の「丸T」マークものといったところでしょうか。意外に細かく見直されてるなあ、という印象です。 <それでは、いよいよ計測へ・・・> 今回は、「14Tダブル巻き+スーパーストック缶+進角12.5度+メタル軸受け+丸Tブラシ」の実力を 探るため、3つのモーターを比較対象として取り上げてみました。 (1)スーパーストック23T・タイプT (スタンドアップの丸Tブラシ、進角20度、メタル軸受け) (2)スーパーモディファイド11T (スタンドアップの丸Tブラシ<=付属のスペアブラシ>、進角12.5度、ベアリング軸受け) (3)ダイナラン・スーパーツーリング (スタンドアップの旧・Tブラシ、進角15度、ベアリング軸受け) それぞれ、グラフのヨコ軸として (A)回転数 (B)消費電流 を用いたもの、計6枚のグラフを示します。 なお、計測したダイナストーム付属14Tは、あらかじめ、RCT標準の 「3.6Vニッカドで5分間の無負荷通電ナラシ」を施し、 無洗浄、メタルへの注油などのメンテ一切なしの状態で計測しています。 (実線はダイナストーム付属14T、点線はスーパーストック23T・タイプTの基準データ(その18参照)) (実線はダイナストーム付属14T、点線はスーパーストック23T・タイプTの基準データ(その18参照)) (実線はダイナストーム付属14T、点線はスーパーモディファイド11Tの基準データ(その25参照)) (実線はダイナストーム付属14T、点線はスーパーモディファイド11Tの基準データ(その25参照)) (実線はダイナストーム付属14T、点線はダイナラン・スーパーツーリングの基準データ(その16参照)) (実線はダイナストーム付属14T、点線はダイナラン・スーパーツーリングの基準データ(その16参照)) <考察> そもそも、何のレースに使うといった目的も特にない「孤高のモーター」ですから、 他のモーターと比較してどうのこうの、ということをあれこれ論じても価値はないのかも知れませんが、 上記の代表的な3モーターとの比較から、ダイナストーム付属14Tのおおよそのプロファイルが お分かりいただけるでしょう。 意外なのは、スーパーモディファイド11Tのトルクの細さ。 同じ缶を使っているにもかかわらず、最大トルクは14Tのほうが強くなっています。 さすがに23Tよりはトルクはありますが、ショートスタック15Tダブル(ノーマル13Tダブル換算)の ダイナラン・スーパーツーリングとほとんど同レベルのトルクです>スーパーモデ11T ダイナストーム付属14Tは、ストックとはいいながら、その実力はひと昔前の ハイエンドモディファイドモーター並みのものを秘めています。これは今後の タミヤの取り扱い方次第では、なかなか面白く使えるモーターに「化ける」かも知れません。 (おわり) |