posted on 6/25/2007
last updated on 6/28/2007
タミヤRC製品・即買いカタログ
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RC Car Trend モーター研究室

<その48:速報!タミヤ・ライトチューン(28T)>



<なんで28T?>

タミヤから07年6月13日にリリースされた「ライトチューン」モーター(Item 53983、本体価格2400円)。 07年夏以降に開催されるタミヤGPで指定モーターになる含みがあるということは、これまでの「GTチューン」「ダートチューン」などの例からみても容易に察しがつく話でしたので、RCTとしても 「'07年夏の最優先テーマ」として発売直後に速攻ゲットし、データを公表いたします。全国のタミグラファンの皆様、 同モーターを指定モーターとしてローカルレースに参加される皆様のお役に立てれば幸いです。

(ホビーショー報道では注目してなかったため)箱を開けてみて「おおっ」と思ったのは、そのカラー。 かつての「ブラックモーター・エンデュランス」を思い出すような、 ブラック塗装のカンにブルーのエンドベル。・・・ってことは赤エンドベルの「スプリント」を 模した23ターンくらいのモデルも出るんかいな?・・・というのは現時点では完全に筆者の妄想ですが、つい最近も 「タムテックギア」で似たようなモーターバリエーション展開がありましたから、あながち「ない」とも言えないでしょう。 そのくらい、意図アリアリに感じる配色です。

ただ、このカラーリングを除けば、「GTチューン(25T)」や「ダートチューン(27T)」との違いは ローターのターン数とブラシスプリングの強さだけの
ようです(分解してないので断言は避けますが)。 進角設定は23Tを除くブラシ固定式エンドベル共通の約12度、ブラシも従来どおりの「丸T印」レーシングモーターブラシ(op.581)、 ブラシスプリングはダートチューンを除くタミヤ製スタンドアップブラシモーターに共通の180g品 (部品番号7405079、線径0.49mmの6回1/3巻き)、となっています。 カンの厚みも従来どおり1.3tのようですし、軸受けも従来と同じ形状の (というか、相模マイクロ系OEMモーター共通の)テーパードメタル、 ニッケルメッキ仕様のブラシホルダー、ブラシヒートシンクは 省略、ノイズキラーはタイプRR以降の23Tストックやダートチューンと共通の3素子タイプ、という按配です。

280gもの強大なブラシスプリングを与えられたダートチューンから
一転して、スプリングが「並」の180g品に戻された点がナニゲにダートチューンとライトチューンの位置付けの違いを物語っています。 両者は1ターンしかローター巻き数が違わない、・・・ってことは常識的には巻き線の径まで同一のハズなので、「ブラシバネ」が キャラクターを切り分ける「決め手」になっていることが容易に推察されるからです。いま改めて考えてみると、 ダートチューンがライトチューンより1ターン少ないのは、 「ライトチューンより無負荷回転数が低い」と言われないようにするために、強力なブラシバネ圧に伴う摩擦ロスをカバーすることが 狙いだったのかな?・・・と見れなくもありません。無負荷回転数だけで盲目的にモーターの良し悪しを判断してしまうユーザーが 大多数、という歪んだ現実がある以上、不本意な評価を避けるためにそのような「配慮」があるとしても不思議ではありません。 少なくとも、筆者が商品企画をするなら、そう考えます。
「パワーで劣るモーターが回転数で勝る」というのはいかにも不自然ですから。ただ、実際に回してみないで スペックだけで空論を述べていても仕方ありませんね。実際はどうなんでしょう?
(この論点は「その49」でさらに掘り下げることにします)

ライトチューンのカンが「黒」というのも何か暗示的です。いよいよ 「スポチュン」の廃版が決定的なのか!? と感じずにはおれません。 GTチューンが出た当初、「スポチュン後継か?」と騒がれましたが、どうも出力的に大き過ぎ、 スポチュンと明らかに違うので「後継」にはそぐわないな〜、と感じられる方も多かったのではないでしょうか。 測ってみないと分かりませんが、イメージ的には、ルイス・ハミルトンよろしく「遂に真の後継者登場」という感じになるのではないかな〜、と 測る前からワクワクします。さて真相はいかに?

ところで、「今回のちょっと驚き」は「ブラシ」にありました。今さらブラシの何に驚いたかって、いやその、 ほとんどまったく「磨耗」が見られなかったんですよね。今回の計測用サンプルは例によって「3個」ですが、 そのいずれも、似たりよったりの状態でした。通常、モーターは出荷前に全数動作チェックするモノですが、 コイツはいかにもやってないような感じです。とにかくブラシには「手で回した」程度の磨耗痕しか残っていません。 品質管理にはいろんな考え方があるんで、「結果」として製品の不良品率が上がらなければどーでもいい話ですし、たぶん これで不具合が増えるという話にはならないと思うですけど、ちょっと気になりました。動作チェック後に 新品のブラシを装着してるのかも知れないですね(考えにくいですが)。ともあれ、ブラシが消耗してない状態で デリバリーされるのは買う側としてはチョット嬉しいですけどね!


<計測方法>

今回の測定時の温度範囲は25度±2度(公称値)で、実際には初夏ということで26.0〜27.0度と高めの条件でした。 モーター温度やダイノ駆動用のFETの温度変化で測定結果がブレないよう、室温+5度程度に収まるよう 適切な冷却インターバルを置いて計測しています。 電源(12V-19Ahカーバッテリー)など、 その他の条件も従来どおりです。

計測に際してはいつもどおり、ブラシ表面がコミュテーターに全アタリするところまでナラシを行い、一定時間放置して 室温まで冷ました後、各個体につき5回ずつデータを取得、 出力(W)のメジアン(中央値)に最も近いデータを代表値としました。なお、サンプル数は都合により3個です。 従来の経験上は、概ね信頼に足るデータ取得ができるサンプル数です。

なお今回は、「おまけ企画」として、「ダートチューン」の280gブラシバネに交換した場合の特性データも取得してみましたが、 意外な結果が出たので「その49」で別途コメントします。



<計測結果>

(表1:ライトチューンの生データ@7.2V<出力の大きい順>)


(表2:ライトチューンの生データ@5V<出力の大きい順>)



7.2V時と5V時の標準データは以下のとおりです。


<ヨコ軸:回転数で表示>
(実線はライトチューン@5.0V、点線はライトチューン@7.2V)


以下、
スポーツチューンと比較してみました。


<ヨコ軸:回転数で表示>
(実線はライトチューン(28T)、点線はスポチュン(23T))



<ヨコ軸:トルクで表示>
(実線はライトチューン(28T)、点線はスポチュン(23T))



<ヨコ軸:消費電流で表示>
(実線はライトチューン(28T)、点線はスポチュン(23T))



参考までに、GTチューンと比べると、こうなります。


<ヨコ軸:回転数で表示>
(実線はライトチューン(28T)、点線はGTチューン(25T))



<ヨコ軸:トルクで表示>
(実線はライトチューン(28T)、点線はGTチューン(25T))



<ヨコ軸:消費電流で表示>
(実線はライトチューン(28T)、点線はGTチューン(23T))



<考察>

いくら時代の差、素材技術の向上があるといっても、「仮想ライバル」のスポーツチューンと比べて、 あまりにもキャラクターが違い過ぎることに驚きを隠せません。ライトチューンの出力特性は、兄弟の 「GTチューン」 「ダートチューン」と非常に似ており、トルクフルで回転数の伸びが悪い、という スタイルであるだけに、マグネットが弱く、回転数がやたらと伸びるスポチュンとは好対照をなしています。

このほか、スポチュンとの比較で際立っている点は、「ライトチューン」の効率の高さです。 最高効率「79.3%」というのは、5×4mmブラシタイプのモーターとしても秀逸なレベルです。 「スポチュン」と比べると、実に10%以上もの効率差があります。ブラシがソフトになり、接触面積も多いので 摩擦抵抗は約3割も増えているのに、最高効率がレベルアップしているのです。理由はズバリ、「回転数が低いから」。 直流ブラシモーターは回転数が上がるとコイルに流れる電流が交流の振る舞いに近づき、電流が流れにくくなって効率が極端に悪化し、 出力が下がるので、やがて出力と摩擦抵抗が均衡し、回転数が一定に(頭打ち)なります。 単純な「摩擦と出力の均衡」ではなくて、回転数の増加に伴って見かけ上の電気の流れ方が 「直流から交流に変わっていく」点が、直流ブラシモーターの特性を理解するうえでの大きなポイントです。このことを逆に考えれば、 コイルが直流を支障なく流せる低回転域で効率が高くなるのは当たり前の話で、だったら、 低い回転数で出力の出るモーターを作ったほうが効率(燃費)は上がるよね、というのも道理です。

果たせるかな、この理屈を「地で行った」ライトチューンは、 「スポチュンよりもパワフルなのに省燃費」という、なんだか 自動車エンジンの話みたいな特性に仕上がっています。両者の最高出力とその時の消費電流、効率を 比較すると、スポチュンが90.8W、32,2A、47.7%であるのに対し、ライトチューンは104.0W、29.0A、59.8%と すべての面でスポチュンを上回っています。出力に関しては、スポチュンより14.5%もアップしています。 ターン数をあと2ターンくらい増やして、30ターンで良かったんじゃないか? と思ってしまうくらいの ハイパワーです。「スポチュン代替」を銘打つには、まだまだパワーがあり過ぎる、という感じです。

GTチューンとの比較では、特性的には素直にターン数の差が出ていることが分かります。 「20A未満の負荷が軽い領域でほとんど性能が拮抗していますが、絶対的な最高出力・最高回転数が違うので、 「伸びの差」となって両者の性能差が現れてきます。タミヤGPに当てはめて考えると、 現行のタミグラルールでは、「7」なんていう「とんでもなく軽いギヤ比」を指定している関係で モーターがすぐに吹け切ってしまい、最高回転数や最高出力の絶対値が低くなる分、ライトチューンのほうが ストレートスピードは落ちるでしょう。しかし、消費電流が少ない領域で使用されがちなので、 「加速感」はGTチューンでの走行とほとんど変わらないはずです。 スタート時を除けば40Aとか60Aなんていう負荷はかからないハズですからね。まぁやってみれば分かることです。

ちなみに、RCTが一般のギヤ比無制限レース用として推奨するギヤ比は、 1500g、3700HV搭載のツーリングカー前提で、ナロータイヤ仕様で4.6±0.3、ミディアムナロータイヤで4.2±0.3(!)です。 「ダートチューン」よりも当然ながらさらにピニオンを1〜2枚上げる必要があります。もはや通常のタミヤシャシーでは ホトンド不可能な値ですが、ベストパフォーマンスを得るならこのくらいが必要です。 車重が100g重かったり、バッテリーのグレードが低かったらギヤ比の値を0.3〜0.5増やしてくださいね。

* * *

ここまで書いていてハタと気付いたんですが、この出力レベルって、実は昔の 「ダイナラン・レーシングストックモーター(ショートスタック20ターン)」 とほぼ同水準! なんですよね実は。 試しにグラフを描いてみると、ビックリです。ダイナランストックは、ローター長が通常の2/3程度しかない 「ショートスタック」と呼ばれるタイプなので、20ターンとは言いますが標準ローター換算では15ターン程度の 巻き線長しかありません。なのに、最高出力は106.0Wしかありません。「しか」とは言いましたが当時はコレでも かなりストックモーターとしては過激な仕様だったんですが・・・。

当時のブラシは「レーシングモーターブラシ」ですがop.307 のほうで、初期はMaxtecの「M」、 後にタミヤの「T」の大文字の刻印がされたタイプの ものでした。今の「CheckPoint」ブランド並みに90年代半ばのモディファイドモーターシーンで 一世を風靡した「マックステック」ブランドが 採用していたものをそっくり流用していただけに、当時のブラシとしては間違いなく最高レベルのものでした (Mチューンモーター同梱が初出だったので、当時はてっきり「MチューンのM」だと 思い込んでた人が多かったよううですが<苦笑>)。 とはいえ、現行のop.581 レーシングモーターブラシ(丸Tの刻印があるタイプ)と比べると、 10〜20%も出力が落ちます。 ローターのスペック的には有利なのに出力があまり出ないのは、そのあたりで割を食っているからでしょう。


<ヨコ軸:回転数で表示>
(実線はライトチューン(28T)、点線はダイナランストック(ショートスタック20T))



<ヨコ軸:消費電流で表示>
(実線はライトチューン(28T)、点線はダイナランストック(ショートスタック20T))


グラフを見て驚くのは、その圧倒的な回転数。 ショートローターで吹け上がりの良さを追求したからなんですが、ライトチューンとはまさに両極端ですね。 出力レベルがほぼ同じモーターがここまで違うと、面白いもんですね。 最高出力の発生ポイントが3000回転も違いますから、決して同じギヤ比で使ってはいけません!!(笑)


(おわり)



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